【10月16日 AFP】レバノン北部の村に住むエリー・アルワンさん(42)は、南部から避難してきたイスラム教シーア派(Shiite)の家族を自宅に受け入れた。ここならば安全だと思っていた。

 しかし14日、アルワンさんの村もイスラエル軍の空爆に遭い、シーア派の家族は全員が犠牲となった。4階建てだった家は破壊され、アルワンさんの母親も負傷した。「わが家で虐殺が起きたんだ」とアルワンさんは言った。

 北レバノン県ズガルタ(Zgharta)地区にあるアイト(Aito)村は、キリスト教徒が多数を占める。これまで、シーア派組織ヒズボラ(Hezbollah)を主に標的とするイスラエル軍の攻撃は受けたことはなく、平和だった。

 ところがレバノンの国営通信社NNAによると、今回初めて受けた攻撃で、南部からの避難民を含む23人が殺害された。うち、12人が女性、2人は子どもだった。

 全員が殺害されたシーア派の家族は、アルワンさんの15年来の知人だった。「彼らはちゃんとした人たち…家族だった」。がれきの表面に残った血痕を指さしながらアルワンさんは言った。「友人として彼らを迎え入れたんだ」

 地元議員や治安当局者の情報によると、今回の空爆は避難していた家族を訪れたヒズボラ関係者を標的にしたものだったとみられている。 

 攻撃はレバノン北部全域に衝撃を与え、国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)からは徹底した独立調査を求める声が上がった。

 国境を挟んだイスラエルとヒズボラの1年に及ぶ衝突は、9月23日にイスラエル軍がレバノン東部、南部、そして首都ベイルート南郊のヒズボラ拠点への爆撃を激増させたことでエスカレートした。

 多くの人が、キリスト教徒の村々を含むレバノンの山岳地帯に避難したが、避難民を受け入れる側もその代償を恐れるようになった。