パレスチナ人遺体は人質奪還への交渉材料 イスラエル最高裁が容認
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【10月1日 AFP】イスラエルの最高裁判所は9月30日、同国が拘束していたパレスチナ人の遺体について、パレスチナ自治区ガザ地区(Gaza Strip)で捕らえられている人質の解放に向けた交渉材料として保持する権限があるとの判断を示し、遺体の引き渡しを求めるアラブ系住民の権利擁護団体からの訴えを棄却した。
イスラエル国籍を持つパレスチナ人のワリド・ダッカ(Walid Daqqa)さんは今年4月、イスラエルで拘束中にがんで死亡した。ダッカさんは、1984年にイスラエル兵を誘拐・殺害したとして、38年間拘禁されていた。
イスラエル当局は、ダッカさんの死後も遺体を保管。当時、イスラエルの収容施設で拘束されているパレスチナ人と、ハマスに拉致された人質や人質の遺体との交換交渉が進行中だったためとされる。
最高裁は「軍司令部には、交渉のためにテロリストの遺体を保持する権限があり、対象にはイスラエル国籍を持つテロリストの遺体も含まれる」との文書を出した。
ハマスは昨年10月7日の奇襲攻撃で、イスラエルから251人を拉致。97人がまだガザで拘束されているとみられるが、イスラエル軍は、うち33人はすでに死亡していると判断している。
矯正施設を監視する複数の市民団体によると、イスラエルでは現在、9600人以上のパレスチナ人が拘禁されている。
ダッカさんの遺体引き渡しを求めていた、イスラエルに住むアラブ系少数民族の権利擁護団体「アダラー(Adalah)」は最高裁の決定について、「ユダヤ系イスラエル人の人質の解放交渉において、交渉材料として利用できる潜在的価値があるとの安全保障上の評価にのみ基づいて、イスラエル国籍保有者を含むパレスチナ人の遺体を保持するとする政府の残酷な政策を認めたものだ」と非難した。
イスラエルは長年にわたり、数十人のパレスチナ人の遺体を保管している。その中には、イスラエル側にも犠牲者が出た武力衝突の際に殺害された、武装勢力メンバーの遺体も含まれている。(c)AFP