【9月13日 AFP】中国の競泳選手23人が2021年東京五輪前のドーピング検査で陽性となりながら五輪出場を認められていた問題の最終報告書が12日に公表され、世界反ドーピング機関(WADA)の対応に中国への「判官びいき」はなかったことが示されたとした一方で、WADAが定める反ドーピングの規則と管理プロセスにはさらなる強化が望ましいと指摘され、同機関もそのことを認めた。

 調査を主導したスイス検察のエリック・コティエ(Eric Cottier)氏は、報告書の中で、「WADAは自主的、独立的、かつプロフェッショナルに業務を遂行した。そして、それを否定する証拠は何もない」ことが判明したと記した。

 また、中国反ドーピング機関(CHINADA)が一部の反ドーピング規則を順守していないとも指摘しているが、「それがこの問題の結論や、汚染物質が原因であるとの仮説の容認を変えることにはならない」と補足した。

 これは、7月上旬に発表された中間報告書と一致した内容となっている。しかし、米国反ドーピング機関(USADA)のトップで、これまでWADAに批判的な立場を示しているトラビス・タイガート(Travis Tygart)最高経営責任者(CEO)は、今回の報告書について、「われわれの懸念を裏付けているにすぎない」と疑念を示した。

 米紙ニューヨーク・タイムズとドイツ公共放送ARDは今年4月、中国の競泳選手23人が2021年に、東京五輪直前に行われた国内大会の検査で禁止薬物に指定されている心臓の治療薬トリメタジジン(Trimetazidine)に陽性反応を示していたと報じた。

 CHINADAはこの検査結果について、選手たちが宿泊ホテルで汚染された食べ物から意図せずに摂取したためと結論づけ、処分は不要と判断。この主張をWADAも受け入れて制裁を科さず、このとき陽性が判明していた選手のうち11人が、今夏のパリ五輪の代表にも選出されていた。

 この問題が世界的な騒動となり、WADAによる隠蔽(いんぺい)だと批判していたUSADA。タイガートCEOは、「中国競泳選手23人がトリメタジジンに陽性反応を示したスキャンダルをWADAの責任者が終わらせたがっている中で、本日発表されたWADA調査官による最終報告書は、われわれの懸念を裏付けているに過ぎず、回答が必要な新たな疑問さえも生じさせている」との声明を発表した。

 WADAのオリビエ・ニグリ(Olivier Niggli)事務総長は、最終報告書の内容を歓迎した一方で、「今回の件ではWADAや他の関係者が学ぶべき教訓があるのは確かだ」と声明で述べ、アスリートを対象にした世界的な反ドーピングシステムを強化すべきとの勧告に従う意向を示した。(c)AFP