■今も残る人々のために

 この集落の人口は紛争開始前は3000人弱だった。今年5月までは比較的被害が少なかったが、住民は現在、半分ほどに減っている。残っているのは鉱山労働者と高齢者だけだ。

 がれきが散乱している通りを77歳の女性が友人と歩きながら、前夜のロシア軍による攻撃の被害状況を確認していた。自宅のある通りはまだ、停電している。

「わずかな年金しかもらっていないのに、どこに行けと言うの」

 ビタリーさんは、「私たちは彼らのためにここにいる。民間人がいなければここにはいない」と語った。

 住民から見ればビタリーさんらは「英雄」だ。ただ、爆発をやり過ごすのに慣れているとはいえ、現場に長居はしないようにしている。

「勇敢というか、ばかなのかな」と、ビタリーさんは笑った。

 突然、砲弾が空気を切り裂いた。爆発の衝撃を受け、作業車のバスケットに入っていた作業員が身を縮めた。

「逃げろ! 早く!」と、ビタリーさんが叫んだ。作業員らは装甲車に飛び乗った。作業車はあわてて反転した。

 次の日にまた戻ってくると、ビタリーさんは約束した。

 だが、この日の作業は無駄になった。翌日、集落は廃虚と化していた。(c)AFP/Florent VERGNES