■スポーツにおける影響

 テストステロンは骨や筋肉の形成を促進させる。意図的にテストステロン値を上げることは一般的なドーピングの手法であり、スポーツの世界では禁止されている。

 トップレベルの選手には、テストステロン分泌が過剰な人の割合が高いとする研究もある。

 一方、テストステロンがどれだけパフォーマンスを向上させるかについては依然、議論の余地がある。

 国際オリンピック委員会(IOC)の人権部門の責任者であるマガリ・マートビチ(Magali Martowicz)氏は2021年に、テストステロンが運動パフォーマンスにどのように影響するかについて「科学的なコンセンサス」はないと述べた。

 2021年に開催された東京五輪では、ニュージーランドの重量挙げのローレル・ハバード(Laurel Hubbard)さんがトランスジェンダー女性であることを公言している選手としては史上初めて五輪に出場した。

 ハバードさんは出場資格を得るために、最低12か月間テストステロン値を血液1リットル当たり10ナノモル以下に保つ必要があった。

 ハバードさんはこの条件を満たしていたにもかかわらず、五輪出場をめぐり広く非難を浴びた。

 2021年末、IOCはこうした問題に関する出場資格基準の統一ガイドラインの策定を断念し、各国際スポーツ連盟に任せることにした。

■ボクシングの基準は?

 IOCのウェブサイトには、ケリフ選手は昨年、インドのニューデリーで開催された国際ボクシング協会(IBA)主催のボクシング女子世界選手権(2023 IBA Women's World Boxing Championships)で「テストステロン値が高く、出場条件を満たさなかった」として失格になったと書かれている。

 同選手権では台湾のボクサー、林郁婷(Lin Yu-ting)選手も失格になっている。

 しかし、ロシアのオリガルヒ(新興財閥)、ウマル・クレムレフ(Umar Kremlev)氏が会長を務めるIBAは昨年、ガバナンスや財政、倫理の問題のために五輪から事実上追放された。そのためパリ五輪では、IOCがボクシング競技の統括をすることになった。

 IBAは7月31日、ケリフ、林両選手が受けたのは「テストステロン検査ではなく、別の広く認められている検査」であり「詳細は部外秘」だと発表した。

 IOCの広報担当者、マーク・アダムス(Mark Adams)氏はボクシング女子の出場選手全員が「大会の出場規定を満たしている」と述べた。

 アダムス氏は「問題の選手たちは何年も前から何度も競技に参加しており、突然現れたわけではない。彼女らは東京五輪にも出場していた」と述べた。

「テストステロン検査は完璧ではない。女性が『男性並み』といえるテストステロン分泌量であることも多く、それでもその人は依然として女性であり、女性として競うことができる」

「1度のテストステロン検査で急にすべてが解決する、という考え方は残念ながら該当しない」と付け加えた。(c)AFP