【7月23日 AFP】カマラ・ハリス(Kamala Harris)米副大統領が大統領選の民主党候補となる公算が大きくなったのを受け、ネット上には同氏を標的にした加工画像、性的な誹謗(ひぼう)中傷、人種差別的な投稿が急増し、専門家は、性差に基づく偽情報の氾濫に警鐘を鳴らしている。

 ジョー・バイデン(Joe Biden)大統領は21日、選挙戦からの撤退を表明し、黒人、南アジア系、女性として初の副大統領を務めるハリス氏を後継の民主党候補に推薦。ハリス氏は、党の候補指名を獲得し、11月の大統領選でドナルド・トランプ(Donald Trump)前大統領を打ち負かすと宣言した。

 一方でネット上では、ハリス氏に関する女性蔑視的、性差別的な投稿が爆発的に増加。中には、過去に虚偽だと証明されたデマも含まれている。

 保守派のインフルエンサーは、ハリス氏が1990年代にウィリー・ブラウン(Willie Brown)元サンフランシスコ市長と短期間交際していたことを引き合いに出し、ハリス氏が「枕営業でトップに上り詰めた」ことを示唆する内容を繰り返しSNSに投稿している。

 さらにX(旧ツイッター)では、米富豪で少女への性的虐待事件で勾留中に自殺したジェフリー・エプスタイン(Jeffrey Epstein)元被告とハリス氏が並んでポーズを取っているように見える加工画像も再び拡散された。

 この画像については、AFPが数年前に逆画像検索で検証した結果、一緒に写っていたハリス氏の夫、ダグ・エムホフ(Doug Emhoff)氏がエプスタイン被告に加工されていることが明らかになっている。

 さらにネット上には、米国生まれのハリス氏を「アフリカの黒人女性」と嘲笑する書き込みもあり、同氏の成功は実力によるものではなく、単に少数派として人種的に優遇されてきたおかげだとする見方もある。

 偽情報を監視する団体「アメリカン・サンライト・プロジェクト(American Sunlight Project)」の共同設立者ニーナ・ヤンコウィッチ(Nina Jankowicz)氏は、「こうした作り話やうそは、影響力を持つ女性が公職に就いて任務を果たすのを性別、生い立ち、肌の色によって阻む試みの一つだと認識することが重要だ」と強調。

「ハリス氏の出馬に反対する人には、彼女に対して不快な表現を使うのではなく、彼女の政策や実績の是非についてきちんと議論してもらいたい」と訴えた。

 また、カナダ・トロント大学(University of Toronto)のコンピューター・セキュリティー専門家グループ「シチズンラボ(Citizen Lab)」の代表を務めるロナルド・デイバート(Ronald Deibert)氏は、ネットにはあらゆる偽情報があふれていると指摘。

「プロによる組織的な影響工作で、場合によっては外国の敵対勢力の支援を受けているものもあれば、悪意のある人間が個人的に生み出しているものもある」と注意を呼び掛けた。(c)AFP/Anuj CHOPRA