【7月22日 AFP】米史上で女性、黒人、そして南アジア系として初めて副大統領の座に就いたカマラ・ハリス(Kamala Harris)氏(59)。これまで、共和党からは大統領の職務遂行不能時に権限を引き継ぐには不適任だと批判を受けてきたが、21日にジョー・バイデン(Joe Biden)大統領が選挙戦撤退を表明したのを受け、ドナルド・トランプ(Donald Trump)前大統領の再選を阻止するには最良の人材として、民主党内で称賛されている。

 支持率低迷に苦しんできたハリス氏だが、この1年でかつてのイメージを払拭(ふっしょく)してきた。

 民主党の大統領候補としてバイデン氏の支持を受け、候補指名を「勝ち取る」と声明で明言。「全力を尽くして民主党、そしてこの国を団結させ、ドナルド・トランプを打ち負かす」と宣言した。

 高齢のバイデン氏が昨年、見るからに衰えを見せた中、ハリス氏は人工妊娠中絶の権利を訴え、都市部郊外の女性や黒人男性を含むコアな有権者への訴えにも力を入れてきた。

 バイデン氏の出馬をめぐり、隙あらばチャンスを狙おうと我欲に走る者も現れる中、バイデン氏に忠誠を示し続けたことで党内からも称賛を得た。

 移民のルーツを持ち、父はジャマイカ人で、母はインド人。黒人として、また女性として初めてカリフォルニア州司法長官を務め、その後、南アジア系米国人として初めて連邦上院議員に選出され、輝かしいキャリアを築いてきた。

 一方で、副大統領就任後は失言が多いとの批判を受けた。不法移民問題でメキシコ国境を訪問した際には質問にうまく答えられず、守勢に追い込まれた。側近の離職も相次ぎ、内部の不協和音もささやかれた。

 しかし、2024年大統領選に向けた動きが本格化すると、状況は変わり始めた。

 中絶の権利を唱える党の主張を強調するため、激戦州にもたびたび足を運び、副大統領として初めて中絶クリニックも訪問した。

 うっかり汚い言葉を使うことも多く、家族の間で呼ばれている「モマラ(Momala)」というニックネームが広まるなど、ここに来てようやく雑音をはねのけ、有権者の関心と熱狂を獲得し始めた。

 トランプ氏に勝利すれば、ハリス氏は米国女性に残された最も高いガラスの天井の一つを打ち破り、初の女性米国大統領となる。(c)AFP/Danny KEMP