【6月18日 AFP】作業台代わりにしているコンクリートブロックの上で人形作家のマフディ・カリラ(Mahdi Karira)さんは、古いブリキ缶を材料に人形作りを黙々と進めている。

 こうした間に合わせの材料で作ったマリオネットでも、パレスチナの子どもたちを笑顔にできることを知っているカリラさんは、「人形は私たちの身の回りに彩りを添えてくれる」と言う。

 半年以上に及んでいるイスラエルとの紛争以前は、パレスチナ自治区ガザ地区(Gaza Strip)北部のガザ(Gaza)市に住んでいた。数多く所有していた色鮮やかな人形を使い、しばしば人形劇を上演していた。

 今は中部デイルアルバラフ(Deir el-Balah)にある避難民キャンプで避難民のために人形劇に取り組んでいる。

 イスラエル軍によって包囲されてしまっている中、人形作りのための新しい材料を手に入れるのは難しい。だから、がれきや釣り糸、国連(UN)のロゴが入った空き缶などがその代用品となっている。

「残念ながら、避難して人形も劇場もなくなってしまった」とカリラさんはAFPに語った。「すべての作品をガザ市に置いてきた。材料はあまりない。ここにあるのは大小さまざまな缶だけだ」

 国連児童基金(ユニセフ、UNICEF)によると、今回の紛争により、ガザ地区では今年2月までに約85万人の子どもたちが避難している。

「人形劇で避難民キャンプにいる子どもたちに喜びを与えたい。そうすることで私たちは侵略に負けず、この地球上で確固とした存在であり続けることができる」

「最も重要なことは創作活動を続け、自分の仕事に誠実であることだ。私たちは攻撃を受ける中でも活動を続けることができる。仕事、才能、芸術など、誰もが何かを持っている」

 芸術センターや博物館、歴史的建造物など、ガザの文化遺産や施設は壊滅的な打撃を受けている。

 カリラさんはがれきと化した街を眺めながら、人形は「子どもたちに美しい物事を教えることができる。われわれの歴史や物語を伝えることができる」と語った。(c)AFP