【4⽉16⽇ Peopleʼs Daily】中国・山東省(Shandong)浜州市(Binzhou)のナツメ農家の丁太平(Ding Taiping)さんには最近、新しい友人ができた。中国農業大学(China Agricultural University)の大学院生だ。丁さんは「畑で学生さんと付き合うのは初めてだね」と言った。

 近所にナツメ科技小院が開設されたのは今年初めだった。最初は「この土地に生まれ育ったのでない学生に、何が解決できるのか」と思った。しかししばらくして、学生らは、丁さんが悩んでいた栽培上の問題点を解決してくれた。

 科技小院とは、農業を専攻する大学院生を生産の第一線に常駐させ、農業や農村の発展における実際の問題を研究して解決し、レベルの高い農業人材を育成し、農業と農村の現代化に貢献する取り組みだ。

 中国農業大学が中国初の科技小院を設立したのは2009年で、このモデルは大きく広がった。その一例である西北農林科技大学(Northwest A&F University)が2021年に陝西省(Shaanxi)咸陽市(Xianyang)涇陽県(Jingyang)に設立した野菜科技小院は、新品種の導入と選別、効率的な栽培法、土壌の塩害の解消などの技術を研究している。新たな品種や技術は青海省(Qinghai)や寧夏回族自治区(Ningxia Hui Autonomous Region)などにも伝えられ、恩恵を受ける耕地面積は152万ムー(約1013平方キロ)余り、経済効果は2億元(約42億円)を超えた。

 現在までに中国全国の74の教育機関が1200か所超の科技小院を設立した。専門家総数は2700人余りで、大学院生は5200人を超える。科技小院による技術が導入された耕地は計5億6600万ムー(約37万7000平方キロ)で、増収額は計700億元(約1兆4700億円)を超えた。

 科技小院は海外にも進出した。国連食糧農業機関(FAO)は2021年から2023年にかけて、科技小院モデルの世界への普及を進めた。FAOの幹部であるセルバラジュ・ラマサミー(Selvaraju Ramasamy)氏は昨年9月、第1号の科技小院が誕生した河北省(Hebei)の曲周県(Quzhou)を訪れ、現地の農民が技術と市場を理解しており、1ヘクタール当たりの年間収益は4万2000元(約88万円)を超えていることを知り、「素晴らしい、科技小院を全世界に広める価値を示している」と感嘆した。

 中国農業大学は2019年に、アフリカの小規模農家が抱える問題を解決するための人材を育成する中国アフリカ科技小院の事業に着手した。マラウイ人農学者のオーガスティン・タラバビ・フィリ(Augustine Talababi Phiri)氏もクラスに参加した。

 マラウイには昨年11月に科技小院3か所が新設された。フィリ氏は同国カスング県(Kasungu)の科技小院の責任者となり、科技小院のモデルの普及を始めた。

 中国アフリカ科技小院は現在、十数か国の72人の農学系大学院生を育成している。一方で、西北農林科技大学などが設立した「シルクロード農業教育科学技術革新連盟」には18か国106の教育機関や企業が参加した。関係者は次の段階として、関連国政府の農業部門や企業などと協力してより多くの科技小院を設立し、農業生産の第一線に根を下ろしての起業を希望するより多くの若者を育成することを考えている。(c)Peopleʼs Daily/AFPBB News