【8月12日 AFP】テレビシリーズ「ゲーム・オブ・スローンズ(Game of Thrones)」のドスラク語やヴァリリア語、映画『デューン(Dune)』のチャコブサ(Chakobsa)砂漠の民が話す言葉。こうした架空の言語は、米国人のデービッド・ピーターソン(David Peterson)氏とジェシー・ピーターソン(Jessie Peterson)氏夫妻が考案したものだ。映画やテレビドラマのキャラクターのために語彙(ごい)や文法をつくり出すことを職業にしているのは、世界中でこの2人しかいないとみられている。

「あなたは私の最後の希望、わが血族の血」

「ゲーム・オブ・スローンズ」でドスラク語のせりふが語られると、視聴者はファンタジーの世界に一気に引き込まれる。

 ところが、「ゲーム・オブ・スローンズ」や『デューン』の原作には、架空の言語は数語しか登場しない。映像用に完成させたのが、ピーターソン夫妻だ。

■始まりはクリンゴン人

 言語クリエーターが映画に起用されるようになったきっかけは、少なくとも1985年にさかのぼる。マーク・オークランド(Marc Okrand)氏が「スター・トレック(Star Trek)」シリーズでクリンゴン(Klingon)人の言葉をつくったのが始まりだった。

 それ以降、多くのファンタジー作品に架空の言語が登場するようになった。

 経験豊かな言語学者のデービッド氏が初めてギャラをもらったのは、2009年のコンペで優勝し、ドスラク語の考案という仕事を引き受けた時だった。

 仏リール(Lille)で今年3月、テレビシリーズ・フェスティバルのゲストに招かれた夫妻は、言語をどのように考案するかについてレクチャーした。

 登場人物の環境、経歴、使用するアイテムについて話し合い、そこから、どんな言語にするべきかを「推定」しながら考え出していくという。

 例えば、ピクサー・アニメーション・スタジオ(Pixar Animation Studios)の映画『マイ・エレメント(Elemental)』では、火のエレメントのキャラクターが話す言語というリクエストを受け、ジェシー氏は、爆発音やマッチをする音をヒントに単語を考え出した。

 単語をつくって終わり、ではない。まず、文法の構築から取り掛かり、女性名詞か男性名詞、動詞の時制などもつくり込む。言葉の響きに取り組むのは音楽好きのデービッド氏、語彙を考え出すのはジェシー氏の担当だ。