【2月23日 東方新報】28歳のサラリーマン王飛(Wang Fei)さんは最近、週末のストレス解消とリラックスに最適な場所を見つけた。それは地元の病院のマッサージ室だ。

 王さんは頚椎病、腱鞘炎、腰痛などの職業病を全て抱えている。地元の病院で診療番号をとるだけで、ミルクティー1杯分のお金で医師にマッサージしてもらって、頭痛もなくなり肩こりも解消され、「まるで生き返ったような感じがする」と王さんは言う。今では、マッサージ室は彼にとって日常生活で欠かせない「命綱」になっている。

 中国では今、彼のように健康管理に熱心な若者がますます増えている。

 動画プラットフォーム「抖音(Douyin)」では、古武術を基にした健康体操「八段錦」の動画再生回数が累計25億回近くに達した。中国の伝統暦で最も酷暑とされる三伏の時期の日光浴に適した時間を示す「三伏天晒背最適時間表」も中国の大手ソーシャルメディア「微博(ウェイボー、Weibo)」のホットサーチに登場した。

 中国版インスタグラム(Instagram)と言われる「小紅書(Red)、中国最大手のメッセージアプリ「微信(ウィーチャット、WeChat)」などでも「養生」という言葉を入力すると、より少ないお金で胃腸を整えたり、睡眠を改善したり、免疫力を高めたりする方法を教える記事が数多く見られる。

 お金を節約するだけでなく、「95後(1995年以降生まれの世代)」や「00後(2000年以降生まれの世代)」の健康法は手間を省くことも追求している。

 今年の春節休暇中、李蓓(Li Bei)さんは割引を利用して90日分のサプリメントを買い込んだ。この商品は、一杯飲むだけで毎日体に必要な栄養素を全て補えるというものだ。彼女にとって、瓶入りや缶入りのサプリメントをたくさん食べる必要がなく、「一気に済ませる」極めて手軽な健康法は、毎日仕事に追われて「頭が回らない」自分にはぴったりだと思っている。

 新型コロナウイルス感染症のまん延を経験した後、中国の消費者は健康と安定をより強く求めるようになり、より合理的な消費になり、商品やサービスの機能性と情緒的な価値へのニーズも高まっている。

 少ないお金で体質を改善したり、健康状態を向上させたりすることに、消費者はますます魅力を感じている。このような心理の変化は、インターネット販売での人々の「年貨(正月用商品)」の買い物にも反映されている。

 中国商務部市場運営・消費促進司の徐興鋒(Xu Xingfeng)司長は、「今年の春節の消費市場では、無糖の菓子、健康食品ギフトボックス、低脂肪スナックなどの売り上げが急増した」と公表した。

 消費産業に的を当てた調査研究企業「北京値得買科技(Beijing Zhidemai Technology)」のデータによると、今年の正月商品フェアの期間中、健康用品の売り上げの増加率は前年比109パーセントに達し、深海魚油の販売総額は前年比36パーセント増加した。また善玉菌、コエンザイムQ10、ビタミンの購買量も、それぞれ前年比107パーセント、39パーセント、20パーセント増加した。

 消費者は健康に対してより多くの投資をすることにも意欲的で、正月商品フェア期間中の「健康診断パッケージ」の発注量は、前年比31パーセント増加している。

 中国でフードデリバリーなどを手掛ける「美団(Meituan)」のオンライン薬局のデータによると、今年の春節(旧正月、Lunar New Year)の一斉ライブ販売「万店直播」期間中、「メラトニン錠剤」が若者に大人気で、睡眠の改善を目的とした購買者の主力は25歳から30歳の層に集中し、次いで30歳から35歳と20歳から25歳の層だった。これらの世代が購買者全体の71パーセントを占めた。

 美団のオンライン薬局の責任者は「健康関連の商品の人気は全面的に上昇し、必需品化、常態化、個性化という新しい傾向が見てとれます」と語っている。

 また、中国の若者が健康法に熱中することは、外資企業にも商機を見せている。栄養、健康、美容などの素材や製品を手掛けるグローバルメーカー「DSM-フェルメニッヒ(dsm-Firmenich)」の中国総裁の周涛(Zhou Tao)氏は、中国新聞社(CNS)の記者に対し「現在中国の一線都市では健康管理の需要が日増しに高まっています。中国は健康と栄養の分野での市場発展の潜在力と発展空間が、他の国々とは比べ物にならないほど巨大な国と言えます」と話している。(c)東方新報/AFPBB News