【2月24日 AFP】クロアチア東部のボスニア国境に位置する山間部に、スパイ映画「007」シリーズに出てきそうな巨大な地下基地が眠っている。

 ジェリャバ(Zeljava)空軍基地は、冷戦(Cold War)時代の1960年代、秘密裏に建設された。

 当時ユーゴスラビアだったこの地に旧ソ連の戦闘機を隠すのが目的で、最盛期には60機近いミグ21(MiG21)を収容していたという。核攻撃にも耐えられるよう設計されていた。

 基地の主要部分は、長さ約3.5キロのトンネルだ。専用の電力、浄水、換気システムを持ち、司令部やオフィスに加えて兵舎もあった。洞窟のように見えるトンネルの先には、五つの逃走ルートが設けられていた。

 計4か所ある出入り口は当時、100トンもの重量があるコンクリート製の格納式ゲートで防護されていたが、今ではゲートはなく、金属製の補強材がむき出しになっている。

 1980年代に10年近くこの基地に所属していた退役パイロットのミルサド・ファズリッチ(Mirsad Fazlic)氏は、「当時としては最先端の軍事・民間技術だった」と振り返る。

 だが1990年代、ユーゴスラビア崩壊後の紛争の際、ユーゴ軍の残党は強力な爆薬を使ってこの基地を破壊した。「中にあったもの、設備も装備もすべて燃やされた。トンネルと壁だけしか残らなかった」

 その後、廃虚と化した基地に寄り付くのは、共産主義時代の遺構を探検しようという物好きな観光客程度だった。

■凍りついた時間

 ところが2016年、スロベニアの映画にこの基地が登場したことで事態は一変。今では年間推計15万人以上が訪れるようになった。

 政府関係者の間では、広大な基地の跡にデータセンターやイベント会場、冷戦博物館などを建設して活用する案も浮上している。すでにカーレースを開催したことがあるという。

 首都ザグレブから訪れた写真家のアンジェロ・ビラグさんは「時間が凍りついたようだ」と感嘆し、「創意工夫あふれるエンジニアリング」に畏敬の念を抱いたと語った。

 いとこでオーストラリアのパース(Perth)から来たマリオ・ガルビンさんは「30年間、手つかずのまま放置されてきたインフラの生々しさ」に感嘆したという。

 ボスニアの町ビハチ(Bihac)から来た航空マニアのハムディーヤ・メシッチさんは、ボスニア側にある二つの滑走路を再開してほしいと語った。

 だが、「観光地化すれば魅力が失われてしまう」として、今のままの状態を望む声もある。

 映像は2023年10月に撮影。(c)AFP/Lajla VESELICA