妊婦でなければ自殺していた…英郵便局システム欠陥の冤罪被害者が語る
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【2月3日 AFP】英国のシーマ・ミスラ(Seema Misra)さんは2010年、ポストオフィス(Post Office)の会計システムの不具合が原因で逮捕され、妊娠2か月で収監された。
ミスラさんはAFPに、もしこの時に第2子を妊娠していなければ「間違いなく」自殺していたと、ウォーキング(Woking)の自宅で語った。
現在48歳のミスラさんは2005年、ロンドンの南西に位置するウエストバイフリート(West Byfleet)の郵便窓口業務を個人事業者として引き継いだ。
業務初日、会計システムで現金残高が80ポンド(約1万5000円)不足していると表示された。このときはささいな問題だと思ったが、じきに大きな問題に発展したという。
次の週に不足金額は200ポンド(約3万7000円)に増えていた。サポートセンターに電話をし、指示された通りにしたところ、その額は一瞬で400ポンド(約7万4000円)になった。
その後も不足金は増え続けたが、ポストオフィス側は聞く耳を持たず、ミスラさんの会計に問題があると非難した。
ある時、監査が行われ、窃盗罪で起訴された。7万5000ポンド(約1400万円)が不明になっている件について過失があったとして、有罪判決を受けた。
ミスラさんは不正確な賃借対照表に署名をしていたことから、改ざん行為については罪を認めたが、窃盗については無罪を主張した。
■電子監視器を着けて出産
だが、問題の原因は富士通(Fujitsu)の子会社が開発した会計システム「ホライズン(Horizon)」の不具合だったことが後に判明。
この不具合により、郵便業務に携わっていた900人以上が有罪判決を受けた。リシ・スナク(Rishi Sunak)首相は一連の問題について「英国史上最大級の冤罪(えんざい)事件」だと表現した。
ミスラさんは当初、「公正な裁判が行われ、自由になれる」と考えていた。
だが第1子の10歳の誕生日でもある2010年11月10日、裁判所はミスラさんに禁錮10月を言い渡した。
量刑言い渡しの際、ミスラさんは失神し病院に搬送された。意識を取り戻すと収監された。
「もし妊娠していなかったら自殺していた。それは間違いない」と当時を振り返った。
一連の冤罪事件に巻き込まれた人のうち、少なくとも4人が自殺したことが分かっている。
ミスラさんは4か月服役した後、4か月間は刑務所外でブレスレット型の電子監視器を装着した状態で過ごした。
出産時も監視器は着けたままだった。ミスラさんは、助産師に非難されているような気持ちになったという。
また、外出制限に違反するなどして再収監される可能性を考え、分娩中も常に不安を抱えていた。
ミスラさんは出所後、親戚に金を借りる生活が何年も続いた。経営していた事業を畳み、家賃収入を得ていたロンドンのアパートは押収された。
前科があることで仕事に就けず、家族は「精神的」のみならず「経済的」にも苦しんだ。
一家の「尊厳や自信」も冤罪事件の被害を受けており、こうしたものには「値段は付けられない」と訴えた。