【2⽉1⽇ Peopleʼs Daily】「あのころは、皆が鼻をふさいで足早に通り過ぎました」――。中国・福建省(Fujian)アモイ市(Xiamen)の篔簹湖(うんとうこ)保護センターで水質管理を担当する陳清福(Chen Qingfu)氏の言葉だ。篔簹湖の面積は1.6平方キロで、かつては内湾だったが1970年代に海側に堤防が作られたため湖になった。そして、周辺に多くの工場が林立して湖に汚水を流し込んだ。湖の汚染問題は市が突き付けられた課題になった。

 当時の中国共産党アモイ市委員会常務委員、常務副市長だった習近平(Xi Jinping)氏は、1988年3月に行った篔簹湖の総合管理に関する会議で環境改善の方針を打ち出した。市人民代表大会は同年9月、「篔簹湖の総合的整備の加速について」の議案を採択した。

 汚染物質を湖に垂れ流していた企業125社への調査が実施された。そして状況に応じて閉鎖、移転、事業変更の措置が取られた。企業の整理の終了後にはわずか1週間後に湖の水質が改善し始めたことが確認された。

 しかし湖底には汚染物質を含む厚いヘドロの層ができていた。当局は大規模な浚渫(しゅんせつ)を行い、浄化した上で岸壁に盛り上げ、湖心島も作った。このことで、洪水防止能力も向上した。さらに海側の堤防に水門を作り、満潮時には海水を取り入れ、干潮時には排水するようにした。1999年からは湖周辺にマングローブを栽培した。栽培面積が拡大するにつれ、海洋生態系は生気を取り戻した。

 1992年には久しぶりにドラゴンボートの試合が開催された。銅鑼や太鼓の音が響く中で、ボートのこぎ手は懸命にオールを操った。湖岸は大変な人だかりだった。人々は「これは湖の対策の成果の最高の検証だ」と感嘆した。

 湖の水質管理は長い道のりだ。アモイ市はその後も30年以上にわたり、環境対策を継続してきた。環境対策の第4期事業までに投入された資金は約11億3000万元(約230億円)で、現在は第5期が実施されている。

 篔簹湖保護センターによると、1987年には湖水のアンモニアの量が1リットル当たり39.4ミリグラムだったが、2022年には0.076ミリグラムにまで低下した。湖では遊泳生物が63種、植物プランクトンが123種、動物プランクトンが73種、底生生物が14種が確認された。鳥類は累計95種が発見された。毎年多くの渡り鳥がやって来て越冬するようになった。

 生態環境の改善は、経済発展の強みにもつながる。今では、優美な景観になった湖畔に本社を移す企業も増え、アモイ市内でも行政、金融、商業貿易、観光、居住が集中する地域になった。

 生態環境は人々の幸福に関わり、発展と保護の関係をどのように処理するかは世界的な課題だ。篔簹湖の「華麗な変身」は、人と自然の調和と共生を促進する中国の生態文明建設の縮図だ。自然を尊重し、自然に順応し、自然を保護して美しい中国を建設する一つ一つの実践と模索は、応用可能な参考事例を提供する、中国の世界に対する貢献でもある。(c)Peopleʼs Daily/AFPBB News