【1月16日 東方新報】中国のZ世代の間でスクラッチタイプの宝くじがブームになっている。Z世代とは、1990年代半ばから2010年前後に生まれた10代から20代のことだ。スクラッチタイプの宝くじは1枚2元(約40円)から20元(約406円)。当選金額は最高1000万元(約2億円)にもなり、カードの表面に印刷された数字や絵柄をコインなどで削るだけで、当たり外れが即座に分かるワクワク感が人気のようだ。

 中国の公営宝くじは、その収益がスポーツ振興に使われる「スポーツ宝くじ(体育彩票)」と福祉に使われる「福祉宝くじ(福祉彩票)」に大別される。「スポーツ宝くじ」は、サッカーやバスケットボールの勝敗や得点差を予想する日本のtotoに近い仕組みだ。一方、「福祉宝くじ」は数字選択式やスクラッチ式などさまざまなタイプがある。

 2023年上半期の宝くじ全体の売り上げは、前年同期比34.1パーセント増の2146億8300万元(約4兆3620億円)と大幅に伸びている。ショッピングモールや路上の雑貨店、夜市の屋台などで宝くじを買い、その場でスクラッチする若者をよく見かける。

 若者の中は、色とりどりの宝くじを花束のように束ねて、恋人にプレゼントしたり、スクラッチしたりする様子をSNS上で生配信するなど視聴者との交流に利用する人もいる。

「若者にとって彩票(宝くじ)は、ストレスの多い現代社会の中で気軽に買える娯楽であり、生活の彩りである」というコメントが中国のSNS上には流れている。

 もっとも、手軽な娯楽には落とし穴もある。中国メディアによると、宝くじに当選した刺激が忘れられず、ギャンブル依存症に似た「宝くじ依存」に陥る若者も問題化している。中には自分が購入した宝くじが当たらないことに腹を立て、一度に3万元(約60万円)分も買ってしまった若者もいたという。

 一方、宝くじ販売をビジネスとして注目する若者もいる。浙江省(Zhejiang)杭州市(Hangzhou)のZ世代である柯嘉運(Ke Jiayun)さんは、2023年12月に宝くじショップをオープンさせたばかりだ。「私の店では1枚10元(約203円)の宝くじがよく売れますね。開店したばかりの私の店には、決まった店で宝くじを買わない好奇心の強いお客さんが集まるようです」と話す。

 安徽省(Anhui)合肥市(Hefei)在住で、長年宝くじを買ってきた鄭新穎(Zheng Xinying)さんは「宝くじショップの開店を成功させるためには、4年に1度のサッカーW杯(次回は2026年開催)を待った方がいい」とアドバイスする。中国でも多くのファンが数万元(数十万円相当)単位でサッカーくじを購入するといわれる。

 中国ではサッカーはバスケットボールと並ぶ人気スポーツだ。W杯開催中は、試合観戦ができるスポーツバーは満員になり、職場などで優勝チームと準優勝チームなどを予想する私的な賭けも繰り広げられる。

 中国では、私営の宝くじは法律違反だ。しかし、私営宝くじの歴史は意外に古く、清代の1720年代に皇帝に仕える役人たちが自分たちの給料を増やそうと、自分たちで独自に宝くじの仕組みを作ったという説も伝えられる。1949年の中華人民共和国発足後は、私営・公営を問わず宝くじは禁止されていたが、改革・開放後の1987年に福祉予算を増やすことを目的として解禁された。

 中国政府も諸外国と同じように公営化によって宝くじを政府の管理下に置き、依存症患者を増やさないようにする方針に転じたのだ。節度を持って楽しめるのなら、宝くじは手軽な「生活の彩り」である。2年後のW杯に向けて、中国各地にある宝くじショップはますます過熱しそうな情勢である。(c)東方新報/AFPBB News