キム・ジョンアン氏の実姉キム・ジョンソン氏(c)news1
キム・ジョンアン氏の実姉キム・ジョンソン氏(c)news1

【12月19日 KOREA WAVE】眠っている「ク・ハラ法」を制定しろ――こんな声が韓国国会周辺で再び高まっている。

ク・ハラ法は2019年11月、韓国の歌手ク・ハラ氏が世を去ると、20年間、消息がなかった実母が現れ、財産相続を要求して、国民の怒りを買い、発議されたものだ。

ク・ハラ法は「扶養義務を果たさなかった親が、亡くなった子どもの財産を相続することを制限」する内容を含んでいる。

国会への請願に10万人以上が同意し、2021年に「共に民主党」のソ・ヨンギョ議員がいわゆる「ク・ハラ法」を発議した。

法務省も2022年6月、同様な内容の法案を国会に提出したが、ソ・ヨンギョ議員が発議した内容と差がある。

ソ・ヨンギョ議員法案は「欠格事由を充足すれば親の相続資格自動的に剥奪する」ものだが、法務省案は「養育義務違反の有無を裁判所が判断する」となっている。

◇先の順位に相続人がいれば、後には権利は届かない

こうしたなか、2021年1月、慶尚南道巨済(キョンサンナムド・コジェ)沖で漁船に乗って暴風雨に遭い行方不明になった故キム・ジョンアン氏(当時56歳)の姉キム・ジョンソン氏(61)がク・ハラ法通過を叫び、多くの人々の共感を得ている。

キム・ジョンソン氏の実母は1967年、当時2歳だったキム・ジョンアン氏ら幼い子ども3人を置いて家を出た。

その実母がキム・ジョンアン氏失踪の知らせを受けて54年ぶりに姿を現し、「私が唯一の相続者」として排他的相続権利を主張した。

実母が主張したのは民法第1004条の「相続順位」のためだ。相続順位は①配偶者と直系卑属(子ども、孫ら)②配偶者と直系尊属(親、祖父母ら)③兄弟姉妹――の順となっている。先の順位に相続人がいれば、後には権利は届かない。

今回のケースでみれば、キム・ジョンアン氏が行方不明になったころ、事実婚関係を6年間続けていた女性がいたが、相続の権利はなく、2人の間に子どももいなかった。

そのため実母が法的に相続人になった。姉キム・ジョンソン氏らは順位が低く、実母が遺産を分割してくれない限り、法的には一銭ももらえない。

54年間、子どもたちを捨てて出ていったにもかかわらず巨額の保険金があることを知って現れた実母は、船舶会社の慰労金5000万ウォンを受け取った後、キム・ジョンアン氏名義の家と通帳を自分の名義に変えた。さらに「息子の死亡保険金2億3000万ウォン余りを支給せよ」と訴訟まで起こした。

1審は実母の訴えを認めた。姉のキム・ジョンソン氏が控訴したが、今年8月に控訴審も「実母に保険金を支払え」と判断した。

控訴審では実母に「死亡保険金のうち約40%程度(1億ウォン余り)を娘と分けて訴訟を終結しよう」と和解を勧告したものの、実母が「独占する」と拒否、結局、裁判所は法に従った判決を下すしかなかった。

キム・ジョンソン氏は「寒い海で必死に姉のことを呼んだであろう弟のことを考えて最後まで闘う」と最高裁に上告した。「国民も問題があると思う方法を3年間なぜ変えられないのか」。キム・ジョンソン氏は政界に向かってこう怒っている。

(c)news1/KOREA WAVE/AFPBB News