【12月13日 AFP】教師に対する攻撃が問題になっているフランスで、ルネサンス時代の巨匠による裸婦画を使ったことを発端に授業崩壊に陥った中学校の教師らが11日、授業をボイコットした。

 問題が起きたのは、首都パリ西郊イスー(Issou)にあるジャックカルティエ(Jacques-Cartier)中学校。中等学校教員組合・統一教職員組合連盟(SNES-FSU)のソフィー・ベネティテー(Sophie Venetitay)書記長によると、「今月7日のフランス語の授業で、裸の女性が複数描かれた17世紀の絵画を教師が生徒に見せた」ことが騒ぎに発展した。

 授業で使われたのは、イタリア人画家ジュゼッペ・チェーザリ(Giuseppe Cesari)の絵画「ディアナとアクタイオン(Diana and Actaeon)」。ギリシャ神話の狩人アクタイオンが、女神ディアナとニンフたちの水浴びを目撃してしまった場面が描かれている。この作品は、ルーブル美術館(Louvre Museum)に収蔵されている。

 ベネティテー氏によると「一部の生徒がショックを受けたと言って、目をそむけたり、気分が悪いふりをしたりした」ほか、クラスでの討論中に「教師が人種差別発言をしたと言い張る生徒」もいた。さらに、この討論中に息子が発言を妨げられたため訴えるとする保護者からのメールが、校長宛てに届いたという。

 ベネティテー氏の話では、教師らは以前から「校内の雰囲気が険悪」だと繰り返し警告していたにもかかわらず学校側からサポートが得られず、今回の問題が「最後の一撃」になったとしている。

 AFPが確認した保護者宛ての8日付のメールで教師らは、「特に困難な状況」に直面したため、授業を行わない権利を行使していると主張。日々「余りある不快感」を覚え、「暴力沙汰の増加」を目の当たりにしてきたと訴えていた。

 11日に同校を視察したガブリエル・アタル(Gabriel Attal)国民教育相は、「この事態の責任を負い、その事実を認めている生徒たち」に対する処分の手続きを開始すると述べた。また、学校側が「共和国の価値観」を順守しているかどうかを確認するため、調査団を派遣すると述べた。

 フランスでは近年、教師に対する攻撃が相次ぎ、緊張が高まっている。

 8日には、2020年にイスラム教の預言者ムハンマド(Prophet Mohammed)の風刺画を授業の教材にした教師のサミュエル・パティ(Samuel Paty)氏(当時47)が過激派に斬首された事件の裁判で、10代の若者6人に有罪判決が下されている。(c)AFP