【12月9日 CGTN Japanese】中国科学院南京地質古生物研究所の科学研究チームはこのほど、今から約1億3000万年前のレバノン琥珀の中に、現時点では最古と判断される蚊の化石を発見したと発表しました。この新発見によってカ科の進化の初期段階ではオスも吸血していたことが証明され、早期の昆虫の吸血行動が思われていたよりも複雑であることが分かりました。この研究成果は国際的な学術誌「カレント・バイオロジー」の4日発行号で発表されました。

 蚊は吸血昆虫で、人間や動物の血液を吸って病気を伝える媒介です。昆虫が吸血行為に使う口器とよばれる器官は、植物の汁を吸うための口器から進化したと考えられていましたが、昆虫の吸血行為の進化過程の研究は、発見された化石に空白期間があることなどで困難です。現在のところ、カ科には3000種以上が認められていますが、人類による蚊の起源や早期進化に対する理解は極めて限られています。

 レバノン琥珀は約1億4500万年前から約1億50万年前の前期白亜紀に形成されたもので、その内部からは最も古い生物が見つかります。中国科学院南京地質古生物研究所のレバノン籍研究員のダニー・アザー氏は長年の野外作業により500カ所近くのレバノン琥珀産地を発見し、採集作業を行いました。今回の研究成果は、中でもよい状態で蚊を保存していた琥珀2個によるものです。

 研究者は南京古生物所のレーザー共焦点顕微鏡、蛍光顕微鏡など先進的な科学機器を用いて観察し、2匹のオスの蚊がいずれも特有の、鋭い三角形の下顎や延長した小歯をもつ構造などを含む口器を持つことを確認しました。現在のメスの蚊には血を吸うための口器がありますが、オスの蚊は口器が退化して、花の露を多く吸えるような仕組みになっています。今回発見されたオスの蚊の口器により、1億3000万年前にはオスの蚊も吸血昆虫だったと推察されました。

 分子生物学上の証拠は、カ科がさらに古いジュラ紀に起源することを示唆しています。これまでにカ科の最古の化石は今から約1億年前の白亜紀中期のものでした。今回発見された琥珀化石のオスの蚊2匹は今から約1億3000万年前のもので、化石による蚊の記録が3000万年近くさかのぼることになりました。(c)CGTN Japanese/AFPBB News