中国の漁村、「ドラマの女王」の花かんざしで一躍有名に
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【11月30日 東方新報】中国・福建省(Fujian)の中心都市、福州市(Fuzhou)からバスで3時間。福建省を流れる晋江の河口に蟳埔村(Xunpu)という小さな漁村がある。村の人口は約7000人。多くの男性が遠洋漁業の大型漁船に乗り込み、女性たちは海女としてカキなどを採って家を守っている。
この村に生まれた女性は子どもの頃から髪を切らず、11~12歳になるとお団子に結って、象牙のかんざしをつける。そして、お団子の周囲に花をあしらったくしなどを丸く挿して頭部に花が咲き乱れたような装飾にする風習がある。
かつて「海のシルクロード」の起点として、遠くはアフリカやインドなどとの交易船が行き来して栄えたという。この村の近くには、アラブ人の子孫だとの言い伝えを持つ人たちも暮らしている。
おおよそ観光客とは無縁だったこの漁村に異変が起きている。2月頃から観光客が徐々に増え始め、9月末から10月初めの大型連休である国慶節には、村の人口の7倍にもなる1日約5万人もの観光客が押し寄せたのである。
きっかけは数枚の写真だった。中国の人気女優、趙麗穎(チャオ・リーイン、Zhao Liying)さんが春節(旧正月、Lunar New Year、今年は1月22日)に合わせて、この村の女性たちがつける花かんざしを挿した写真を自身のSNSアカウントに投稿した。
チャオさんは1987年に河北省(Hebei)で生まれ、2006年にオーデション番組で優勝して女優デビューした。2010年には日中共同制作テレビドラマ『蒼穹之昴(邦題:蒼穹の昴)』に主人公の妹役で出演し人気が出た。その後も出る映画、ドラマ、全てがヒットして「ドラマの女王」と呼ばれるように。現在、SNSのフォロワーは微博(ウェイボー、Weibo)だけで9000万人。瞬く間に美しい花かんざしは話題になり、この村に観光客が訪れるようになったのだ。
もともとは村人の9割が漁業に従事する蟳埔村だが、このチャンスに乗じて、花かんざしを体験できる写真館や特産品を売る店、レストランなどが次々に開業し、どこも満員になっているという。
広大な中国では、地方の珍しい景色や風習がSNSで広まり、珍しがった観光客が詰めかけて、地域振興につながることは多い。しかし、蟳埔村の人たちが花かんざしブームを喜ぶ理由は他にもあるという。
「この村では女性が結婚する際、頭につけた花を友人や親戚に配り、幸せを分かち合う習慣があります」と村の古老は言う。花嫁のブーケのようなものなのだろう。
この話を聞いた観光客は、「幸せのおすそわけ」というコメントを添えてSNSに写真を投稿することになる。もらった人を幸せにする花かんざし。SNS発のブームはまだまだ広がりそうだ。(c)東方新報/AFPBB News