【11月29日 AFP】英国の元病院職員が10年以上にわたって霊安室で少女や女性の遺体に性的暴行を加えていた事件をめぐり、調査委員会は28日、犯罪を許した病院グループ側の失態の数々を批判した。

 デービッド・フラー(David Fuller)受刑者(69)は、イングランド南東部ケント(Kent)州にあるメードストン・アンド・タンブリッジウェルズNHSトラスト(Maidstone and Tunbridge Wells NHS Trust)の病院2か所で雑用係を務めていた2005〜2020年、9〜100歳の少女と女性少なくとも101人の遺体に性的暴行を加えた。事件が発覚した時には、1980年代に若い女性2人を性的動機で殺害した罪で既に終身刑に服していた。

 調査委は、2年前に開始した調査の第1段階の中間報告書を公表。フラー受刑者がどのようにして誰にも気付かれることなく院内で犯行に及んできたのかについて、詳細を明らかにした。

 調査委員長を務めたのは、病院の最高経営責任者(CEO)と顧問の経験を持つジョナサン・マイケル(Jonathan Michael)氏。同氏は記者会見で、病院の経営管理体制や規則、方針、手続きなどの不備と「常態化した無関心」が合わさり、これほど長期間にわたる犯罪を可能にしたと指摘。「長年、フラー受刑者の働き方に疑問を呈する機会を逃してきた」と述べた。

「フラー受刑者は日常的に残業し、霊安室で不必要な仕事や、同受刑者のように慢性的な腰痛を抱えた人が行うべきではない仕事を引き受けていた」「こうした行為は一度も疑問視されなかった」。フラー受刑者は1年間に444回も霊安室を訪れていたにもかかわらず、「見とがめられることはなかった」と述べた。

 マイケル氏は同病院グループに対し、「不備と怠慢に対する責任を真摯(しんし)に向き合い」、助言を実行するよう要請。霊安室と検視解剖室に監視カメラを設置し、保全要員にはそうしたエリアでは2人1組で作業させる他、夜間やメンテナンス中に遺体を霊安室の保冷庫に入れずに放置する慣行を廃止すべきだと勧告した。(c)AFP