【7月2日 AFP】韓国警察は2日、同国史上最悪の連続殺人犯が特定され、女性14人を殺害していたと発表するとともに、数十年にわたる捜査の失敗を謝罪した。一連の事件では、無実の男性が20年間服役したことも明らかになっている。

 警察によると、別の事件で終身刑に処されているイ・チョンジェ(Lee Chun-jae)受刑者(57)は、首都ソウルの南に位置する華城(Hwaseong)市の郊外で、1986年からの5年間に女性10人をレイプした上、殺害したという。被害者の年齢は14~71歳だった。

 犯人捜索には当時、一つの事件としては過去最多となる数の警察官が動員された。2万1000人前後が捜査対象となり、約2万人分の指紋が調べられたにもかかわらず、犯人特定には至っていなかった。

 一連の事件はポン・ジュノ(Bong Joon-ho)監督による2003年の映画『殺人の追憶(Memories of Murder)』の題材にもなった。

 昨年になって、最新の犯罪科学技術を用いて当時の証拠品からDNAが採取され、イ受刑者が容疑者として浮かび上がった。最初の殺人から30年以上たっていた。

 イ受刑者は取り調べで、華城市で起きた10件すべての殺人を認め、さらに8歳の少女を含む4人の殺害を自供。これ以外に、女性9人をレイプしたことも明かした。

 同受刑者は現在、1994年に義理の妹をレイプして殺害した罪で終身刑に服しているが、これ以外の犯罪については時効が成立しており、起訴されることはないという。

 地元警察署長は2日、報道陣の前で頭を下げ、被害者らの遺族と、事件1件について冤罪(えんざい)で20年間服役した男性をはじめ、容疑者と誤認された人々に謝罪した。

 冤罪が確認されたこの男性は、華城市で10代の少女がレイプ、殺害された事件で1989年に有罪判決を受け、20年間服役した後、2009年に仮釈放されていた。昨年警察がイ受刑者に対する捜査を開始した後、再審を求めていた。

 同警察署長は、この男性は暴行を受け「虚偽の自白を強要された」と認め、1980年代に男性の捜査に関わった警察官と検事計8人が、職権乱用と違法拘束の罪で起訴されたことも明らかにした。

 報道によると、1990年代に華城市の殺人事件の容疑者として警察に捜査を受けた人のうち、少なくとも4人が自殺。いずれも警察から暴行を受けたとされている。(c)AFP