中国インフルエンサー推奨の「酔い覚まし薬」に疑問の声
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【11月29日 東方新報】「酒席で友に会えば千杯飲んでも足りない」という諺(ことわざ)があるほど、中国では酒との関わりが強い。今日ではかなり減ったといえ、中国でビジネスをする人なら商談の席で酒を飲まざるを得ない状況に追い込まれた経験は一度や二度では済まないだろう。
宴会での生き残りと二日酔いの克服が必須とも思える中国で、人気のインフルエンサーがワイン愛好家に紹介した「酔い覚まし薬」の効果が疑わしいと指摘を受け問題となっている。
このインフルエンサーとは、会員制のワイン販売などで2020年には3億5000万元(約72億4602万円)を売り上げたという女性。ネット上では600万人を超えるファンを持つという。
女性は今年8月、SNS上で自ら使用して効果があったという「酔い覚まし薬」を紹介した。その薬を販売する会社の社長に勧められて試してみたといい、その効果を「飲んだ翌日も大学時代と同じようにすっきりと爽やか」「本当に酔いが覚めた」などと宣伝した。さらに自分の会員の三百数十人に試してもらったところ、93パーセント以上の好評を得たなどとも持ち上げた。
薬の価格は20錠で399元(約8260円)。販売会社の宣伝では「アルコール分解酵素が多いほど酒量が増す」「分解酵素を元から増やせば、アルコール代謝が加速する」などと効能をうたっていた。
ところが、専門家によれば本当の意味で酔いを覚ます薬は存在しないという。
「この製品を服用することでアルコール分解酵素を補充できるというのはまやかしです」
南京市第二医院の公衆衛生医師、肖瑤(Xiao Yao)氏はそう指摘する。肖医師によれば、アルコールを分解するアルコール脱水素酵素やアルデヒド脱水酵素はタンパク質で、タンパク質は体内に入るとアミノ酸に分解されてしまうし、そもそも個々人の分解酵素の量は遺伝子によって決まっている。経口で補充することは不可能だという。
「中国には現在、合法的に発売されている酔い覚まし薬はありません。ほとんどのこのような製品はせいぜい健康保健品です。飲酒後の不快感を緩和したり、胃の粘膜の保護や肝臓を保護したりするかもしれませんが、酔いを覚ますとは言えません」
場合によっては、女性や会社が虚偽の宣伝をしたとして法的責任を問われる可能性も出てきている。
ちなみに肖医師は、こうした商品を飲んだからと言って、酒がいっそう飲めるようになるわけはなく、「飲めば飲むほど酒が強くなって酒量も増える」などとのたまう人に対しては、常に酒を飲んでいるため身体が鈍感になって耐えているだけで、「決して酒が飲めるように体質が変わったのではない」と手厳しい。
飲酒のダメージを少しでも軽くしようとする左党の涙ぐましい努力は国境を問わないようで、中国では二日酔い対策としてヨーグルトやレモン蜂蜜水などが上がるが、これらも飲酒後に起きる脱水症状を緩和する効果はあるものの、アルコールの分解そのものを助けるわけではないという。
肖医師は、もし飲まなければならない状況になったら、空腹を避けて飲む前に何かを食べるように勧める。アルコールの吸収速度を遅らせ、酔う危険を下げるためだ。だが飲酒は、そもそも他の病気を誘発するリスクを高める。
「健康の観点から考えると酒は控えたほうがいいでしょう」 (c)東方新報/AFPBB News