【11月9日 AFP】ナチス・ドイツ(Nazis)による犯罪行為において、医師や医学者が「中心的役割」を担っていたとする論文が9日、公開された。論文は医学の歴史を再考する研究プロジェクトの一環で、医療従事者の関与の度合いについて「長年の誤った認識」を解く狙いがある。

 英医学誌ランセット(The Lancet)に掲載された論文は73ページに及び、これまで最も包括的な内容になっているという。

 これによると、ナチス政権下での医学的残虐行為は「少数の過激な医師」や「強制された」医師によるものだけではなかった。

 ドイツでは1945年までに、非ユダヤ人医師の50~65%がナチス党員となっていた。これは「他の学術専門職と比べ、はるかに高い割合」だった。

 優生学や、第2次世界大戦(WWII)中にナチスが推し進めた、婉曲(えんきょく)的に「安楽死」と呼ばれた殺人計画の結果、「少なくとも23万人」が死亡した。うち7000~1万人が子どもだった。

 30万人以上が「遺伝子学的に劣性」と見なされ、強制不妊手術を受けさせられた。

 論文はまた、それを否定する証拠が多数あるにもかかわらず、ナチスの医学は単なる「疑似科学」だったとする「ありがちな誤解」がいまだ残っていると指摘する。

 実際には、ドイツの研究者は「優生学を研究・振興し、人種差別的な医学の理論的解釈を発展させていた大きな国際ネットワークの一部」であり、ナチスの研究成果は「医学的知識の基準」として採用されることもあった。

 航空安全、低体温症、たばこやアルコールの人体への影響に関する今日の知見は、ナチスの研究成果に一部基づいている。しかし、どのようにして研究結果が得られたのかということに対する意識は低いという。

 ナチスの犠牲者の遺体は「強制的な医学への貢献」として、研究や教育に利用された。犯罪が関与していることが明かされないまま標本が「戦後数十年後にわたり」研究目的で保管されていたこともあった。