【11月5日 東方新報】「村の放送」(村からのライブ情報発信)の人気上昇の背景には、農村の旺盛な産業、生態、文化、観光の現状と農村の消費市場の拡大がある。将来的にはさらに多元的な「村の放送」を生み出し、育成して、いっそう多くの農民が活躍し、農業分野の産業チェーンとバリューチェーンの再構築を応援する必要がある。

 現在は「農民豊作祭り・秋の消費キャンペーン」がにぎやかに開催されている最中で、多くのeコマースプラットフォームが「村の放送」活動の成果や計画を発表している。この1年間、中国の動画配信アプリ「抖音(Douyin)」のeコマースライブで配信された農産品販売に関わるショート動画は2186件にも上る。

 中国最大のeコマースサイト淘宝(タオバオ、Taobao)の「淘宝村計画」がスタートして以来、11万人を超す農民たちがメインキャスターとして330万ステージのライブ配信を展開してきた。

 ショート動画アプリ「快手(Kuaishou)」も、今後3年間で100万の「村の放送」を育成する「スター計画」を宣言している。

「村の放送」とは、農村の様子を紹介するライブ配信と、農村のライブ配信のメインキャスターのグループの両方を指している。初期の頃は、新しいことが好きな人たちがショート動画を通じて農村の生活を紹介する活動だった。その後このショート動画とeコマースのライブ配信とが融合して、「村の放送」は社会現象級のeコマースの新形態にまで発展した。

「村の放送」は難しくはない。特に専門的な脚本や撮影技術も不要だ。山の中にいても、スマホ1台あれば農産品を山から出荷することができる。「村超」(『美郷村サッカースーパーリーグ』の愛称)発祥の地・貴州省(Guizhou)榕江県(Rongjiang)を例にとると、国家の「『インターネットプラス』農産品の都市向け出荷プロセストライアル県」として、2200余りの現地ライブ配信運営グループを育成し、農村のeコマースのインフラストラクチャーを構築している。

「村の放送」の人気は偶然の産物ではない。

 背景の一つは、主要な農産品が毎年豊作で地方特産の農産品が豊富なこと、農村の産業、生態、文化、観光が盛んなことを、「村の放送」を通じて直接に見ることができ、双方向的なプレゼンテーション方式が好評を博していることにある。

 もう一つは、郷鎮(村よりも規模が大きく地方の町に近い)と村という二つの消費市場は、消費市場全体の38パーセントを占め、農民の収入の増加速度が何年も連続して地方都市部の住民のそれに勝っていたことだ。eコマースプラットフォームにとって、新たな市場を発掘し新しいユーザーを獲得するために「村の放送」は欠かせない手段となった。

 また、政府の奨励政策も追い風となった。「農副産品ライブ販売eコマース基地」という名称が中央政府の重要文書にも登場した。

「村の放送」は農村人材の育成・振興にとっても必要なものだ。どのように若者層に農村部で事業を行う機会を与えるかは、一貫して農村振興の難問だった。近年、「村の放送」に携わる人数が急速に増加したことが、農村振興を推進する特色ある人材パワーとなっている。

 ショート動画のライブ配信プラットフォームは新しい職業の受け皿として、多くの「新しい農民」に農村でのチャンスを与え、多くの創業や就業の機会をもたらした。

 優秀な「村の放送」が一つ増えれば、何組もの農村人材が増えていくのだ。

「村の放送」は農産品の流通にも必要なものだ。農村eコマースは上への流れと下への流れの二つがある。すなわち、農産品を都市に向けて販売する流れと消費物資を農村に向けて販売する流れだ。

 農村が豊作だとしても、それだけで農民がお金を稼ぐことができるとは限らない。農産品を売って初めて収入になる。上への流れ、すなわち農産品の都市への販売の流れが農民の収入増加のカギだ。小規模な農家が大きな市場を相手にする時、季節的また地域的な販売困難な時期が避けられない。「村の放送」は、小さな力で大きなことを成し遂げ、都市と農村のデジタル格差を埋め、農民がそこから利益を得て、ネットワークの流量を「富の増大」に変える手段となっている。

 しかし、農産品の販売は1回のライブ配信ですぐに効果が出るものではない。「村の放送」のメリットは生産と販売との連携の効率を高めるもので、始めることは容易だが、持続的な販売は簡単なことではない。

 また、配信内容のレベルの均一性や商品の品質の一貫性の低さなどいくつか不足しがちなところもある。

 多くの「村の放送」は流量が少なく、フォロワーが少ない。これは農産品販売の支援効果に影響を及ぼしている。「村の放送」は一つの「入口」に過ぎないのだ。カギとなるのはユーザーの体験と産業支援だ。すなわち、生産の標準化と細かな管理が必要で、品質管理と注文処理が追い付いていることが必要だ。

 デジタル農村の核心となるのはデータだが、重要なキーとなるのは人だ。新時代の「村の放送」には高学歴者も成功者も多い。彼らはグループを編成して業務を進め、産業化した運営方法を採用している。その背景には産業チェーン全体を見据えた事業マインドがあり、これは従来の農家単体には欠けていたものだ。

 このことは、ヘッドの役割の一群のメインキャスターを育成し、同時に農村の草の根キャスターも育成して、それぞれの強みを生かすグループ戦略が有効であることを、われわれに啓示している。将来はさらに多元的な「村の放送」集団を生み出し、育てる必要があり、多くの農民を活躍させ、農業分野の産業チェーンとバリューチェーンの再構築を支援する必要がある。

「村の放送」の推進では地域の特性やニーズに合わせ、県レベルの経済を基盤とし、農業に対する初心を忘れずに、農村の産業振興を成就させる必要がある。「村の放送」は、農民、宅配物流、eコマースプラットフォーム、運営者、メインキャスターなどを包括する一種の生態圏だ。これら生態圏の構成者たちが共同価値の創造、共通利益の享受を行い、グループとしての力量を形づくる。

 例えば、県の区域では県クラスの「eコマースサービスセンター」の場所と設備を利用して「ライブ配信基地」や「村の放送学院」を立ち上げることができる。eコマース業者は配信流量の支援、プラットフォームでの支援、オンライン教育などの方法で、青年農民の育成や支援を強化することができる。

 村の魅力を生かし、地元情報の発信源にもなり最近人気が出ている「村のカフェ」から「村の放送局(ライブ配信ステーション)」に至るまで、こうした動きの中に未来の農村産業振興の情景を予見することができるのではないだろうか?(c)東方新報/AFPBB News