【10月19日 AFP】ロシア中央銀行は18日、新1000ルーブル紙幣に描かれた教会の丸屋根に十字架がないとの抗議をロシア正教会の司祭らから受け、発行を中止した。問題の教会は現在博物館となっており、実物にも十字架はない。

 ロシア正教の影響力は、ウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)政権下で著しく増大している。

 中央銀行は今週、1000ルーブルと5000ルーブル紙幣の新デザインを発表したばかりで、こうした撤回は珍しい。

 中央銀行はまだ「広く流通していなかった」と説明した。

 新1000ルーブル紙幣には、頂点にイスラム教を示す三日月が設置されている尖塔(せんとう)と、丸屋根の頂点に十字架がないロシア正教の教会が描かれている。

 これらの建物は両方とも、イスラム教徒が多く住むタタルスタン(Tatarstan)共和国の首都カザン(Kazan)のカザン・クレムリン内に現存する。

 教会は17世紀に建造されたもので、1917年のロシア革命後にボリシェビキ(Bolshevik)によって十字架が取り外された。建物自体は現在、国立博物館として使用されている。

 絶大な人気を誇るパベル・オストロフスキー(Pavel Ostrovsky)司祭は、17万4000人のフォロワーを擁するテレグラム(Telegram)に、新紙幣の問題は「デザイナーの無能さ」か、タタルスタンのイスラム教徒による「意図的な挑発」のいずれかによるものだと投稿していた。

 大半のロシア人はこの教会の歴史を知らないため、「実際はどういう姿をしているのかは関係ない」と主張した。

 ロシア正教会は、中央銀行の新紙幣発行停止は「正しい」決定だと歓迎した。(c)AFP