【10月28日 AFP】カナダで、家賃や不動産価格の高騰から路上生活者が急増している。

 東部ケベック(Quebec)州では、路上生活者は大都市であるモントリオールが中心だったが、9月に公表された報告書によると、2人に1人は農村部で生活していた。

 モントリオール東方80キロに位置する人口7万人の町グランビー(Granby)に住むダニー・ブロダールコテさん(39)は、数か月前から墓地に近い森の中でテント生活を送っている。恋人とアパートを借りていたが、6月に退去を迫られた。

 用務員として「週5日」働いている。「住める場所がほとんどないのは、家賃が高過ぎるから」だと話した。

 数ブロック先の公園は、老若男女が野宿をする仮設のキャンプサイトと化している。ブロダールコテさんのように定職に就いている人もいる。

 ケベック州政府の報告書によれば、路上生活者となった4人に1人近くは、家に住み続けられなくなったことが原因だ。

 2018~22年に州内のホームレス人口は44%増加し、昨年1万人に達した。反貧困団体の代表を務めるカリーヌ・ルシエ(Karine Lussier)氏によれば、カナダの人口の5%を占める先住民族の中でも特に先住民イヌイット(Inuit)が多いという。

 グランビーのジュリー・ブルドン(Julie Bourdon)市長はAFPに対し、市はキャンプサイトを解体して居住者を別の場所に移動させるより、「許容地域」として、現状を維持することを選んだと説明した。

 こうした状況は氷山の一角にすぎないと指摘するのは、首都オタワから川を隔てた対岸に位置する、人口30万人弱のガティノー(Gatineau)のフランス・ベリル(France Belisle)市長だ。州がまとめた報告書の数値は「1年前のもの」だと話す。

 今年に入りインフレが加速する中で、現状は統計よりはるかに悪いと懸念する。

「もはや収入の範囲内でやり繰りできるレベルではなくなっている」と話した。