■出勤前に川で体を洗うのが日課

 国内で人口が2番目に多いケベック州は、新型コロナウイルスの感染拡大や記録的な移民流入など、さまざまな要因で人口が増加し、深刻な住宅不足が起きている。

 しかし、ケベック州のみならず、全国的に路上生活者が急増していると専門家は警鐘を鳴らしている。

 ウェスタンオンタリオ大学(University of Western Ontario)のシェリル・フォーチャック(Cheryl Forchuk)教授は、政府の統計では路上生活者は全国で約23万5000人とされているが、これは保護施設に入所している人数にすぎないと指摘する。

「実際の人数は、連邦政府による現在の推計の3倍に上る恐れがある」と話した。

 ジャスティン・トルドー(Justin Trudeau)首相も先月、「収入が十分にある人でさえ住居の確保に苦労している状況にある」と認めた。

 反貧困団体のルシエ氏は、支援を受けずに路上生活から抜け出すのは現実には不可能だと話す。

「私たちは憤り、悲しんでいる。何年も前からずっと、『気を付けて。人道危機が迫っている』と警告してきた」と話した。

 ブロダールコテさんは、手頃な価格の住まいを見つける希望をまだ捨てていない。だが、今のところは、出勤前に近くの川で体を洗う日課を続けるしかない。

「これまで一度も親に小銭ですらせがんだことはなかったのに、3か月前に初めて、お金を貸してほしいと頼んだ」と言う。冬が近づく今、数か月後はどんな暮らしをしているのか、先が見えないと話した。(c)AFP/Genevieve NORMAND