【9月29日 AFP】米国務省は28日、中国が年間数十億ドルを費やして世界中に偽情報を広めていると報告書で指摘した。世界の言論の自由を「急激に収縮」させる恐れがあると警告している。

 米国務省傘下のグローバル・エンゲージメント・センター(Global Engagement Center)が公表した報告書は、「(中国による)地球規模の情報操作は、パブリックディプロマシー(広報文化外交)の問題にとどまらず、世界の情報空間の完全性に対する挑戦でもある」と指摘。

「野放しにすれば、中国が輸出する技術、取り込まれた地方自治体、中国による直接的な報復に対する恐怖といったものが、世界の表現の自由を急激に収縮させる未来を招きかねない」と警鐘を鳴らした。

 報告書によると、中国はプロパガンダ、偽情報、検閲などを通じた「対外情報操作」に年間数十億ドルを費やしている。

 また、中国や中国共産党に関する肯定的なニュースを広める一方、台湾や人権、低迷する国内経済といった物議を醸す問題については、中国の主張にそぐわない重要情報を隠している。

 中国の情報操作の手法には「デジタル権威主義」の推進、国際組織の悪用、中国語メディアの統制などが含まれる。

 中国はまた、外国メディアの株式を取得し、ネット上のインフルエンサーを後援し、外国の政治エリートや記者を取り込もうとしている。

 例えば、アフリカ東部で対価を支払っているにもかかわらずその事実を隠して現地紙に「好意的な報道」をさせたり、「パキスタンのメディアの実質的に支配」しようとしたりしたと報告書は主張している。

 中国政府はこうした取り組みを通じて「世界の情報環境を再構築」しかねないという。

 さらに、中国は通信アプリの微信(ウィーチャット)を活用して「民主主義国に在住する中国語話者」を標的に偽情報を流布したり、動画投稿アプリ「ティックトック」を運営する中国IT大手バイトダンス(ByteDance、字節跳動)に「中国政府を批判する可能性のあるユーザーのプラットフォーム使用を阻止」させたりしている。(c)AFP