【12月24日 AFP】ベネズエラ南東部エルカヤオ(El Callao)の金の不法採掘場で働く10歳のマーティン君(仮名)は読み書きはできないが、砂金採りにかけてはすでにベテランだ。

 この町の子どもたちは、遊びで砂金採りを始めるが、じきにフルタイムの仕事になる。人権団体らは、危険を伴う搾取だと非難している。

 体が小さく機敏な子どもは、露天掘りの狭い穴に入り込み、土を掘るのに向いている。

 石油の生産量が激減しているベネズエラでは、いまだかつてなく金の重要性が高まっている。

 子どもたちは容赦ない日差しが照り付ける中、土の入った重い袋を担ぎ、泥で濁った水たまりまで運んで、木製の皿を使って金をより分ける。

 いとこたちと砂金取りをしているマーティン君は「金は水銀とくっつく」と説明した。水銀は有毒で環境も汚染するが、ここでは鉱石から金を取り出すために使われている。

 マーティン君を含め、この地域に約1000人ほど違法な金の採掘に携わる子どもがいる。

■生活のため


 子どもの人権団体Cecodapのカルロス・トラパニ(Carlos Trapani)氏はAFPに、違法採掘者の間では重労働とそれに伴う危険は「当たり前のこと」として受け取られていると話した。

 採掘場近くの村エルペルー(El Peru)に住むマーティン君は「学校に行くより金を掘りたい」と話した。AFPは両親の許可を得て取材を行った。

「お父さんはお金は働けばもらえると言っている」「ここで稼いだお金で、靴や服など自分の物を買っている。時々、お菓子も」と語った。

 経済協力開発機構(OECD )の2021年の報告書によると、子どもが採掘した金の多くは最終的に軍や政府高官の手に渡っている。

 違法な金の採掘の大半はベネズエラのアマゾン(Amazon)熱帯雨林で行われており、環境や先住民コミュニティーにも破滅的な影響を与えている。

 エルカヤオなど国内の一部地域の商店などでは、不安定な自国通貨ボリバルではなく金が通貨として使われている。

 これは子どもの違法採掘者には有利だ。酔っぱらった客が金を落とすことがあるため、グスタボ君は兄弟と一緒にエルペルーの酒類販売店の外で、土をかき集めている。

「この前は1グラム見つけた」とグスタボ君。「食費にするために、お金はお母さんに渡した」と言う。1グラムは50ドル(約7200円)に相当する。

 グスタボくんは6歳から砂金取りを始めた。新型コロナウイルス感染対策でロックダウンされた後は学校に通っていない。

 ベネズエラの人口の3分の1を占める子どもたちは、経済危機の影響をまともに受けてきた。外国に移住した両親に置いてかれた子も多い。教員の給料が低いため、ほぼ機能していない公立校もある。

 人権NGOのトラパニ氏によると、経済危機がピークに達した2018年ごろには、子どもだけでなく学校を辞めた教師も金の採掘をしていた。(c)AFP/Magda GIBELLI