【9月21日 東方新報】中国に初めての国産大型クルーズ船「愛達・魔都号(Adora Magic City)」が誕生した。すでに海上試運転を行い年内に納船される予定で、上海を拠点に国際航路へデビューする。

 愛達・魔都号は全長323.6メートル、幅37.2メートル、重さ13万5500トン、最大速力22.6ノット、客室2125室、旅客定員最大5246人と世界最大級を誇る。クルーズ船の部品数は2500万点に達し、中国製大型旅客機「C919」の5倍、高速鉄道「復興号」の13倍に相当する。英国のロイドレジスター(ロイド船級協会、Lloyd's Register)と中国の中国船級社(CCS)に登録されている。

 16階建ての巨大な上層建築物は面積4万平方メートル(標準のサッカーコート約6面分)超の共用スペースがあり、劇場やレストラン、バー、アート回廊、スパ、ウオーターパーク劇場、ショッピングエリア、スポーツジム、バスケットボールコートなどが設けられる。5Gネットワークが船全体をカバーしており、「海上を移動する都市」とも呼ばれている。

「魔都」と言うと日本ではマイナスのイメージを抱くが、英語名が「Magic City」であるように、「幻想的、魔法の世界」という意味が込められており、「メード・イン・上海」であることもアピールしている。

 大型クルーズ船の建造は技術的に極めて難度が高く、世界の造船業界では大型液化天然ガス(LNG)運搬船、航空母艦と合わせ「三つの宝石」と呼ばれている。ヨーロッパの造船会社が建造を事実上独占しており、日本と韓国の造船会社が大型クルーズ船の設計・建造に食い込もうとして実現できなかった。

 中国では「三つの宝石」のうち大型クルーズ船だけ建造していなかったが、世界造船大手の中国船舶集団(CSSC)傘下の外高橋造船建造が2019年から建造を開始し、今年6月6日に初進水した。中国で「六」はラッキーナンバーで、六を二つ重ねる「六六大順(すべてが順調に進む)」という言葉もある。最先端技術を駆使したクルーズ船でも、進水の日は古くからの縁起をかつぐのは中国らしいと言える。

 愛達・魔都号は日本航路と東南アジア航路で運航するとともに、かつての「海のシルクロード」になぞらえた中距離・長距離航路の運航も計画している。

 クルーズ船ツアーはコロナ禍の落ち込みから急回復し、世界で活況を呈している。中国の富裕層の間でもクルーズ船ツアーは定着しており、コロナ禍前で、中国は米国に次いで世界2位の市場となっていた。今後は自国のクルーズ船がリッチな国民を乗せて、大海原を航海しようとしている。(c)東方新報/AFPBB News