【9月16日 東方新報】中国では、年明けの春節(旧正月、Lunar New Year)と10月の国慶節(建国記念日)連休、そして夏休みが映画の三大鑑賞シーズンとなる。中国国家電影局によると、今年6月1日から8月31日にかけての夏休みシーズンの映画観客動員数は5億500万人で、興行収入は206億1900万元(約4168億6463万円)に達した。夏休みシーズンの興行収入が200億元(約4044億円)を超えたのは史上初で、このうち国産映画が180億5700万元(約3650億6739万円)と全体の87.5パーセントを占めた。

 作品別では、海外詐欺グループを取り上げた犯罪アクション『孤注一擲(英題:No More Bets)』がトップの35億2600万元(約712億8690万円)。結婚記念旅行中に行方不明になった妻を探すクライム・サスペンス『消失的她(邦題:消えた彼女』が35億2300万元(約712億2625万円)で僅差の2位となった。

 3位は、中国の有名な古代神話「封神演義」実写版第1弾のファンタジーアクション大作『封神第一部:朝歌風雲(英題:CreationofTheGod:KingdomofStorms)』の24億8100万元(約499億4200万円)、4位は人気俳優・王宝強(Wang Baoqiang)氏が監督と主役を務め、両親が出稼ぎに出ている農村の「留守児童」たちをテーマにした『八角の籠の中(英題:Never Say Never)』の22億400万元(約443億6000万円)、5位は中国を代表する詩人・李白(Li Bai)の友情ストーリーを描いたアニメ『長安三万里(英題:Chang An)』の17億9900万元(約363億7128万円)となっている。

 一方、ハリウッド大作は興行収入で中国勢に大きく差をつけられた。『トランスフォーマー:ビースト覚醒(英題:Transformers: Rise of the Beasts)』は6億5500万元(約132億4246万円)、『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース(英題:Spider-Man: Across the Spider-Verse)』は3億5600万元(約71億9740万円)、『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE(英題:Mission: Impossible – Dead Reckoning Part One)』は3億4800万元(約70億円)だった。

 中国作品の人気について中国メディアは、「『孤注一擲』や『消失的她』は実在の通信詐欺や保険金詐欺事件をモデルとしており、現代的なテーマとストーリーの面白さが幅広い年齢層の関心を集めた。その他の作品も中国の歴史、文化、社会を題材としており、若いZ世代(1990年代後半~2010年生まれ)を中心とした関心を集めている」と分析する。

 また、深セン大学(Shenzhen University)文化産業研究所の張振鵬(Zhang Zhenpeng)副所長は「ハリウッド作品はストーリーの型枠がパターン化しており、作品もシリーズ物が多い。観客が飽きてしまっている。対照的に国内の監督や脚本家たちは自国の観客や市場のニーズを把握しながら映画をつくっている」と指摘する。

 また、今夏の大半の映画はプロモーション予算のほとんどをSNSに投入。海外ではティックトック(TikTok)として知られるショート動画プラットフォーム「抖音(Douyin)」や中国最大のSNS「微博(ウェイボー、Weibo)」、動画共有サイト「ビリビリ動画(bilibili)」などに映画のハイライトシーンのショート動画を投稿し、集客に成功した。

 映画評論家の董杉(Dong Shan)氏は「人びとはもはや、評論家のコメントやインフルエンサーの宣伝、評価サイトなどに頼らず、自分でショート動画を見て映画を見に行くか決める時代となった」と語る。(c)東方新報/AFPBB News