【9月17日 東方新報】街を気ままに歩き、歴史的な建物を眺め、路地裏で見つけた雰囲気の良い喫茶店でコーヒーを飲む。お金はあまりかけず、でもSNSへの画像アップは忘れずに。こうした「城市漫歩(シティーウオーク)」が中国でブームとなっている。若い女性らを中心に人気のSNS「小紅書(Red)」では、「シティーウオーク」の検索数が昨年の30倍になっている。

 河北省(Hebei)出身の田闊(Tian Kuo)さんは、シティーウオーク愛好家の一人。北京市内で明・清の時代のレトロな街並みを再現した前門地区や、伝統家屋が残る胡同(フートン)の一つ・長巷頭条をそぞろ歩きし、市内を流れる風光明媚(めいび)な三里河にたたずむ――というのが最愛のコースだ。途中で雑貨店に立ち寄ったり、本屋で時間を過ごしたり。田さんは「都会にいながら、都会の喧噪(けんそう)を忘れられます」とシティーウオークの魅力を語る。

 中国では最近、「特殊部隊型旅行」という旅行スタイルが話題となった。週末に観光地へ向かい、1日に4万歩も歩いて観光地を十数か所を回り、夜は3~4時間だけ寝て翌日も強行軍を繰り返す。日本語なら「弾丸旅行」という言葉が当てはまるだろう。

 「あまり金をかけない」という意味では共通しているものの、シティーウオークは特殊部隊型旅行とは真逆のスローツーリズムと言える。コロナ禍の期間中、海外旅行や国内の遠距離旅行が制限され、「街ブラ」にあらためてスポットライトが当たったとも言える。

 中国各地の都市では週末にシティーウオークのイベントを行う団体が増えている。参加者は1グループ最大十数人までとし、コーヒー1杯と同じ28元(約566円)ほどで参加できる短時間コースもあれば、知識豊富なガイドが同伴して一日散策する150~200元(約3032~4043円)のコースもある。北京市や上海市、成都市(Chengdu)など歴史が古くコースも豊富な都市が人気だが、最近は新疆ウイグル自治区(Xinjiang Uighur Autonomous Region)やチベット自治区(Tibet Autonomous Region)、雲南省(Yunnan)などでもシティーウオークのコースが誕生している。

 シティーウオークの参加者はZ世代(1995年以降生まれ)の若者が多く、参加する理由は「癒やし」が最も多いという。SNSでは「街をぶらつきながら樹木をハグしたり、夕日を眺めたりして、心が癒やされる」といった書き込みが目立つ。現代の中国の若者たちは生まれた時から生活が豊かな一方、受験競争や出世競争に追われ続けている。そうしたストレスから一時解放される手段として、シティーウオークが人気を集めているようだ。(c)東方新報/AFPBB News