【9月17日 CGTN Japanese】中国中央広播電視総台(チャイナ・メディア・グループ、CMG)が国内の博物館と共同でリリースした文化・歴史系カレンダーアプリ「文博カレンダー」は13日、杭州博物館所蔵の中国戦国時代(紀元前476~紀元前221年)の文化財「水晶杯」を取り上げました。一見何の変哲もなく、普通のグラスのように見えることから、「最もタイムスリップ感のある」文化財とされています。

 この水晶のショットグラスは1990年に中国東部の浙江省(Zhejiang)杭州市(Hangzhou)半山鎮石塘村で出土したものです。グラスの直径は7.6センチ、底面の直径5.2センチ、底の部分の厚さは2センチ、全体の高さは15.4センチです。水晶グラスは口がやや開き気味で、自然と手にフィットする美しいラッパ状のフォルムをしています。そして、本体と底の部分との接合部はくびれたデザインになっています。一見すると現代のショットグラスとそっくりですが、検査の結果、この無駄をそぎ落とした「ミニマルデザイン」の水晶グラスは、間違いなく戦国時代中期から末期のものであることが判明しました。研究によると、この水晶グラスは良質な水晶の塊を丸ごと使って作られたもので、光に照らされると淡い琥珀色を見せ、これまでに中国で出土した古代の水晶製品の中で最も大きいものだということです。

 墓から出土した器物と墓室の特徴から、墓の主人は紀元前306年に楚が越を滅ぼした後、楚国から余杭(現在の杭州)地区に派遣された最上級の長官である可能性が高いと推測されています。この余杭の長官は生前、この水晶グラスで水や酒を飲んでいたのかもしれません。

 この貴重な水晶グラスには、実は未だに3つの謎があります。第一は材料の出所です。この水晶グラスは、純度の高い水晶の塊を丸ごと使って作られていますが、このような純度の高い水晶の原料は、現在でもなかなか見つかりません。研究者は、2000年以上前にはこのような高品質の天然水晶が存在していたのではないかと推測しています。第二は芯の取り出し方。水晶は硬度が高い鉱物のため、手作業で水晶を加工していた時代には、とても難しい作業だったことが想像されます。ましてこのグラスは開口部が広く底部分が細いデザインのため、芯の取り出しがより難しいと見られています。第三は研磨方法です。昔の人がどのようにしてグラスの内壁と外壁をこれほどまでにツルツルに磨いていたのかも、解明されていない謎の一つです。いずれにせよ、この水晶グラスのフォルムや原料、製造工芸などは当時の人々の美的感覚だけでなく、高度な技術を反映した貴重な工芸品です。(c)CGTN Japanese/AFPBB News