ウィーンの博物館、「ヒトラーのバルコニー」ツアー開催 聖地化を懸念
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【9月12日 AFP】オーストラリアの首都ウィーンのオーストリア歴史館(House of Austrian History)はこのほど、施設の一部である非公開の通称「ヒトラー(Adolf Hitler)のバルコニー」が、極右政党のプロモーション動画に登場したことを受け、聖地化を阻止するためガイドツアーを開始した。
ヒトラーは1938年、ナチス・ドイツ(Nazi)が母国オーストリアを併合した際、このバルコニーで演説を行った。バルコニーは現在使用されておらず、一般公開もされていない。
だが先月、来年の選挙で勝利が確実視されている自由党の青年部が公開したプロモーションビデオに、このバルコニーが映っていたことから国内では怒りの声が上がった。
ビデオには、炎上する仏パリのノートルダム大聖堂(Notre Dame Cathedral)など暗示的なカットが登場。その中に、青年部のメンバーが地上からバルコニーを見上げたり、たいまつを持って並んで歩いたりするシーンが含まれていた。
バルコニーがある建物を現在使用している歴史館のモニカ・ゾマー(Monika Sommer)館長は、自由党の動画を受け、バルコニーに焦点を当てたガイドツアーを企画したと話した。
ゾマー氏はAFPに「社会的な需要と関心があると気付いた。また、(インターネットの)掲示板を見ると、多くの間違った情報や誤った解釈が流布しており、教育も必要だと感じた」と話した。
■「あえて新しいアプローチを」
今のところ、5回のツアーが計画されている。初日の7日は満員で、35人の参加者は、バルコニーに続くガラスがはめ込まれた木製の扉の前で、ゾマー氏の説明に聞き入った。参加者の中にはバルコニーに出られないことを残念がる人もいた。
ツアーに参加した舞台俳優の男性(56)はAFPに、「タブーはなくすべきだ」と話した。
バルコニーの利用はこれまで、特別な機会に限られていたが、歴史館は長年、一般公開を訴えてきた。
ゾマー氏は「われわれはあえて、この場所に新しい形でアプローチすべきだ。事前予約制のツアーなどの一般公開によって、バルコニーが神聖視されなくなるかもしれない」と強調した
当局はこれまで、手すりの低さなど安全性を理由に開放を承認していない。(c)AFP