【9月12日 東方新報】中国南部の広東省(Guangdong)東莞市(Dongguan)に住む大学生の孟雨(Meng Yu)さん(仮名)は、途方に暮れている。SNSを通じてアルバイトを募集していた「法律コンサルタント会社」に応募すると、業務として1日250~300本も電話をかけ、SNSの微信(ウィーチャット、WeChat)で最低7人と「友人」になるよう正社員から命令された。未経験の大学生が、知らない人に怪しいビジネスの話を電話で持ちかけた上で、SNSでつながるなんて芸当ができるはずもない。毎日残業させられたあげく、「成績が悪い」という理由でアルバイト代ももらえなかったという。

 別の大学生、李雲(Li Yun)さん(仮名)もスマートフォンのアプリ上で募集広告に応募したことを後悔している。「住宅・食事付きで時給13元(約260円)、工場での簡単な作業」と書かれていた。夏休みにずっと働けば、1学期分の学費と生活費になる計算だった。

 李さんは翌日、大学寮のルームメイトと2人で広州市(Guangzhou)に到着したが、バイトアプリに募集広告を出していた仲介業者から「もう13元の仕事はなくなってしまった。別の場所で時給11元(約220円)の仕事がある」と告げられたが、交通費を自腹で支払って戻ることもできず、仕方なく11元の仕事があるという別の工場に向かった。

 しかし工場に到着すると、担当者からは時給8元(約160円)だと告げられ、そのまま移動に必要な身分証明書も没収されたまま、半ば強制的に働かされるハメになったという。

 孟さんや李さんのケースは中国メディアが報じる被害例のほんの一部だ。中国では就職難を背景にして、大学生らをターゲットにしたブラックバイトが横行している。中国にも労働関連法はあり、最低賃金も定められている。しかし、アルバイトをする若者は法律知識が乏しく、つけ込まれているようだ。

 ブラックバイトの被害の大半は本人にとどまるが、中には犯罪まがいのマルチ商法やねずみ講の勧誘をさせられ、犯罪組織に引きずり込まれて加害者になっていく若者も増えているという。日本の「闇バイト」と似た構図だ。

 日本でもリーマンショック後の2010年ごろから「ブラックバイト」という言葉が使われるようになった。マルチ商法の勧誘などにエスカレートしたケースもあったといわれる。現在の中国とよく似ている。

 実際、中国と日本の悪徳業者や犯罪組織は、手口を学び合い協力しているようだ。これまでに日本人リーダーが30人を束ね、日本各地で宝石店などを襲った日中混成強盗団が有名だ。

 こうした事態に危機感を強めた日本と中国の警察は捜査協力を進めている。2017年7月には中国沿岸部の福建省(Fujian)で振り込め詐欺の容疑者として日本人35人が逮捕されたが、日本側の通報を受けて、中国警察が摘発したと発表されている。

 ブラックバイトやマルチ商法、振り込め詐欺など社会問題や犯罪行為が簡単に国境を越える時代である。中国でも日本でも、悪事の手口は常に進化し、より巧妙になってきている。中国で被害が増えているケースは日本でも用心した方がいいのかもしれない。とりあえず、バイトアプリやSNSを通じたアルバイト募集は、よくよく内容を確かめてから応募した方が良そうだ。(c)東方新報/AFPBB News