【8月25日 AFP】ロシアのウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領は2018年に制作されたドキュメンタリー映画で、人の過ちを許すことができるかと問われ、一瞬考えた後に「できる」と述べてこう答えた。「しかし、すべてではない」

 ジャーナリストのアンドレイ・コンドラショフ(Andrei Kondrashov)氏はさらに踏み込んだ。「あなたにとって許せないことは何ですか?」

「裏切りだ」。旧ソ連の情報機関KGBの元将校だったプーチン氏はそう答えた。

 プーチン氏の長年の盟友とされたエフゲニー・プリゴジン(Yevgeny Prigozhin)氏(62)率いる民間軍事会社ワグネル(Wagner)が6月に反乱を起こし失敗した際、プリゴジン氏はすぐに投獄されるか、失踪するか、抹殺されるだろうというのが大方の観測筋の見方だった。

 だが、24年間続くプーチン政権にとって最大かつ屈辱的な政治的危機は、意外にもプリゴジン氏とその傭兵(ようへい)が隣国ベラルーシへの亡命を許されるという形で幕が引かれた。

 それでも「プーチンのシェフ」とさえ呼ばれたプリゴジン氏は国内にとどまり、6月末には大統領府に呼ばれプーチン氏と3時間にわたって会談。7月にはサンクトペテルブルク(St. Petersburg)で開催された「ロシア・アフリカ首脳会議」にも招待された。

 ワグネルの反乱からちょうど2か月がたった23日、プリゴジン氏はモスクワから300キロ離れたトベリ(Tver)州で起きたプライベートジェット機の墜落で死亡したと見られる。

 この事態を目にした世界では、プーチン氏は見せしめとなる形で報復できる機会を待っていただけではないかとの疑念が深まっている。

「プーチン氏は概して、復讐(ふくしゅう)はほとぼりが冷めてから実行するのが一番うまみがあると考える人物だ」。先月米コロラド州で開かれた安全保障フォーラムで、米中央情報局(CIA)のウィリアム・バーンズ(Bill Burns)長官は語った。「私の経験から言えば、プーチン氏は究極の報復の伝道者だ」