プーチン氏怒りの「報復」再びか プリゴジン氏死の謎
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■決して忘れない
プリゴジン氏の死はまだ謎に包まれている。単純な事故なのか、プーチン氏の復讐から逃れようとするプリゴジン氏の偽装なのか、あるいはプーチン氏の知らないところで治安部隊が実行した殺人なのか?
プリゴジン氏には国内の敵も多かった。しかし多くの専門家は、プーチン氏を批判した人々の不審死のパターンやロシア治安部隊の過去の行動から見て、プリゴジン氏の劇的な最期にはクレムリンの承認があったという見方には説得力があるとしている。
かつてロシアにとって最大の外国人投資家の一人だった英系米国人実業家のビル・ブラウダー(Bill Browder)氏は「プーチンは決して許さないし、決して忘れない」と言う。「プリゴジン氏はプーチン氏を弱く見せた。プーチン氏にとってそれは究極の罪だ」とAFPに語った。
「プーチン氏が権力を維持しているのは皆を恐怖に陥れ、従属させることができたからだ。それは残忍な独裁者としてのイメージに100%依存している」
フランスのカトリーヌ・コロナ(Catherine Colonna)外相は24日、AFPの取材に対し「プーチンの盟友とされた人物は死亡している割合が特に高い」と語った。
■元同僚から批判勢力まで
ロシア大統領について「クレムリンの殺人者(Killer in the Kremlin)」という本まで生み出した事件の数々では、KGB時代のプーチン氏の元同僚たちが死を遂げている。
06年、放射性物質によって英ロンドンで毒殺されたロシア連邦保安局(FSB)の元職員アレクサンドル・リトビネンコ(Alexander Litvinenko)氏が代表的だ。
ほかにもプーチン氏に批判的な人々の死が目立つ。06年のプーチン氏の誕生日には、女性記者アンナ・ポリトコフスカヤ(Anna Politkovskaya)氏が射殺された。15年には野党指導者ボリス・ネムツォフ(Boris Nemtsov)氏が、大統領府からわずか数メートルの場所で射殺された。
最近では20年に反体制派指導者アレクセイ・ナワリヌイ(Alexei Navalny)氏が神経剤ノビチョクで攻撃された。ドイツで治療を受け一命を取り留めたが、帰国後は投獄されている。
昨年のウクライナ侵攻開始以来、弾圧が強まる中、著名実業家の自殺や早死が相次いでいる。昨年9月には石油大手ルクオイル(Lukoil)のラビル・マガノフ(Ravil Maganov)会長が、病院の窓から転落死した。モスクワのエリートの間では、戦争懐疑論者が粛清されているのではないかとの憶測が広がっている。
「プーチン氏は『もっともらしい否認』をしながら敵対者を殺害するのを好み、『現在調査中だ』と言う」とブラウダー氏は語った。「だが裏では、他の皆を見渡しながら『これが裏切り者の末路だ』と言うことができる」 (c)AFP/Adam PLOWRIGHT