【8月19日 AFP】かつて米国の玄関口だったエリス島(Ellis Island)を通った移民によって築かれた大都市、ニューヨーク。しかし先月、エリック・アダムズ(Eric Adams)市長は「もはや受け入れる余地がない」と悲鳴を上げた。より良い生活を求める移民は今も、数百人単位で到着し続けている。

 8月の第1週、マンハッタン(Manhattan)で移民にシェルターや行政サービスを提供する仮設センターとなっている元高級ホテルの前の歩道では、主に西アフリカからの亡命希望者数十人が手続きを待ち、寝泊まりしていた。

 ニューヨーク以外の場所へ行くよう移民に促す発言をしたアダムズ氏は、市の保護条例違反だと批判され、自由の女神像(Statue of Liberty)に象徴されるニューヨークの精神を裏切ったとの非難を浴びた。

■「他の都市の検討を」

 旧ルーズベルトホテル(Roosevelt Hotel)の外にいた一人、アブドゥラヒ・ディアロさん(25)は祖国モーリタニアから2週間かけて、まずはトルコへ、次にニカラグアへ渡り、メキシコから越境して米国に入った。かかった旅費は8000ドル(約120万円)。「民主主義」と「尊厳」を求めて旅に出たとAFPに語った。

 セネガルから来たというグループの中には、店の軒先に段ボールを敷いて5日間寝泊まりし、シェルターへの収容を待ったと語る人もいた。

 昨年4月以来、中南米からの移民を主とする9万3000人以上がニューヨークに到着している。市は条例によって、希望者には無料で住居を提供することが義務付けられている。

 ニューヨークへの集中的な移民流入は、テキサスなど共和党が主導権を握る州がジョー・バイデン(Joe Biden)大統領の移民政策に抗議する目的で、民主党が主導権を握る地域に移民を移送していることも一因だ。

 当局によると現在ニューヨーク市の保護を受け、シェルターやホテルで暮らしている約10万6000人のうち、約5万4000人が移民となっている。

 アダムズ市長は今後到着する移民に、シェルターやサービスを提供できる「保証はない」ので、他の都市を「検討」するよう勧めるチラシをメキシコ国境で配布する方針も打ち出した。

 市長は連邦当局と協議し、解決策を見いだそうとしている。国境管理の強化、非常事態宣言の発令、連邦政府の援助などを求めている。

 また連邦当局には新規入国者に対する労働許可の承認を速めてほしいともいう。「働けないことほど反米的なことはない」と市長は付け加えた。

 移民のための緊急住宅運営機関の幹部は最近こう語った。「われわれの思いやりは無限だが、スペースは無限ではない」 (c)AFP/Ana FERNANDEZ