【8月19日 AFP】「バルカン半島(Balkans)の真珠」と称されるオフリド湖(Lake Ohrid)で、欧州最古級の可能性がある高床式住居の集落が発見された。周囲は、くいの突き出た板で防御され、要塞(ようさい)化されていたとみられる。

 放射性炭素年代測定によって、この遺跡は紀元前6000~5800年のものと判明した。欧州の湖畔でこれまで見つかった集落遺跡としては最古だという。

 スイス・ベルン大学(University of Bern)の考古学者アルベルト・ハフナー(Albert Hafner)教授は「これまでに知られている地中海やアルプス(Alps)地方の湖畔の集落遺跡より数百年古い。われわれの知る限り欧州最古だ」とAFPに語った。

 この集落には200~500人が住んでいたと考えられている。高床式住居は湖面の上や、定期的に増水する場所に建てられていた。

■要塞化

 さらに驚くことに最近の潜水調査で、この集落が無数のくいが付いた板をバリケードとして使い、要塞化されていたことを示唆する証拠が発見された。「彼らは自己防衛するために森を伐採する必要があった」とハフナー氏は言う。

 しかし、村人たちがなぜ大規模な要塞を築く必要があったのかという謎については、今も考古学者たちが答えを探している。

 オフリド湖のアルバニア側にある村リン(Lin)の沖合の湖底には、約10万本のくいが沈んでいると推定される。ハフナー氏はこの発見を「研究にとって真の宝の山」と呼んでいる。

■「スイス時計のように正確」

 考古学者たちはプロダイバーの支援を受けて湖底を探索し、これまで化石化した木片や貴重なオーク材のかけらを発見してきた。

 樹木の年輪を分析すれば、日常生活を再現し、当時の気候や環境条件について「貴重な洞察」が得られるとアルバニアの考古学者アドリアン・アナスタシ(Adrian Anastasi)氏はいう。「オークはスイス時計のように非常に正確で、カレンダーのようなものだ」

「先史時代の遺跡を傷つけることなく、その構造を理解するために、私たちは非常に慎重にゆっくり調査を進めている」

 同氏は「高床式住居の建築は、複雑な作業で非常に難しい。この集落の住民がなぜそれを選択したのか、理解することが重要だ」とも述べた。

 遺跡からさまざまな種子や植物、野生動物や家畜の骨が見つかっていることから、食料は耕作と家畜に依存していたと仮定できるという。しかし発掘調査や分析を完了し、最終的な結論を出せるまでにはさらに20年はかかる見込みだ。(c)AFP/Briseida MEMA