【8月2日 AFP】フランス・パリのセーヌ(Seine)川沿いに並ぶ古書店「ブキニスト」が、パリ五輪の開会式の警備上の理由で一時立ち退きを求められている。だが、店主らは移動するつもりはないと反発している。

 来年7月26日に予定されている開会式は、五輪史上初めて競技場の外で実施される。

 セーヌ川沿いの低い壁には、「ブキニスト」と呼ばれる箱型の屋台が固定されている。店主らはこの中に在庫を保管し、営業時にはふたを開けて本を並べる。

 複数の情報筋は27日、欧州最大の古書露店を成す「ブキニスト」200軒が、パリ警察から立ち退きの通知を受け取ったと明らかにした。

 通知で警察は、警備上の理由からブキニストの箱を撤去することが「必要不可欠」だとしている。

 ブキニストの88%が所属するパリ古書組合のトップ、ジェローム・カレーさんは、店主たちは「立ち退くつもりは一切ない」と話した。

「セーヌ川の責任者は、(ブキニストが)開会式の景観を損ねる」と説明したという。

「われわれはパリの重要な象徴だ。450年前からここにいる」とカレーさん。「五輪の祝典はパリの祝典であるべきなのに、われわれをその風景から消そうとするのはおかしな話だ」

 パリ市役所は27日、ブキニストは「セーヌ川沿いのアイデンティティーの一部を形作る」ものであるとして支援を表明した。

 市は全体の59%に当たる、570個の箱を撤去する必要があるとみている。箱の移動と再設置費用を負担し、その過程で損傷が生じた場合は修理費も払うと提案した。

 さらに、ブキニストが国連教育科学文化機関(UNESCO、ユネスコ)の無形文化遺産(Intangible Cultural Heritage of Humanity)への登録を目指していることから、登録を後押しする「改修」になるとも主張した。

 カレーさんは、壊れやすくなっている箱もあり移動はできないと指摘。すべてを改修するには150万ユーロ(約2億3000万円)が必要となる見込みだと話した。

 映像は7月29日撮影。(c)AFP