【8月1日 東方新報】近年、中国漫画の海外進出が進んでいる。

 中国では漫画は主にスマホなどのアプリで読まれ、縦スクロール形式でフルカラーなのが特徴。バトル、ファンタジー、学園青春モノなど、絵柄やストーリーに日本漫画の影響を感じる作品も多い。

 平凡な生活を送る大学生が異人たちとの戦いに巻き込まれる『一人之下(邦題:ひとりのした)』(米二<Mi Er>さん作)が2017年に日本のウェブコミックサイト「少年ジャンプ+」で配信され、TOKYO MXなどでテレビアニメ化もされた。中国で7億PVを超えた人気作品で、300年の時を超えたホラーファンタジー『谷囲南亭、墨飛(邦題:ホーンテッドホテル鬼南亭)』(墨飛<Mo Fei>さん作)は小学館が翻訳し、2021年からライン(LINE)マンガで配信。2022年には外務省主催の第15回日本国際漫画賞に入賞した。

 このほか、機械人と動物人間の少年少女たちが繰り広げるバトルファンタジー『桃与末世之書』(辰曦<Chen Xi>さん作)や『人類進化論』『我被boss揍大的』といった作品も欧州で漫画賞に選ばれている。

 一連の作品の多くは、中国最大の漫画プラットフォーム「快看(Kuaikan)」を通じて海外に広がっている。快看は2014年の設立から急成長を遂げ、現在は3億人のユーザーを誇る。世界各国のプラットフォームを通じて200か国・地域にマンガを配信しており、創業者の陳安妮(Chen Anni)最高経営責任者(CEO)は「海外市場は成長を続けており、快看の総収入の65パーセントを占めるようになった」と明かす。

 中国ではまだ漫画家が少なく、快看は漫画家の医療保険や健康診断などの福利厚生を負担。安心して創作に取り組む環境を提供し、育成に努めてきている。2021年のデータで、漫画家の平均月収は5万3600元(約106万円)で、トップクラスの年収は500万元(約9929万円)に達している。

 ただ、中国の経済成長が鈍化傾向にある中、陳氏は「コロナ禍以降、漫画業界は低迷し、収入に大幅な増加が見られない。見切りをつけて転職する漫画家もいる」と説明。停滞を打破する切り札として、人工知能(AI)の活用を考えている。自動着色や線画の適正化といった技術支援をはじめ、インスピレーション・アイデアの発見、ストーリーやキャラクター設定などの作品自体の支援にも生かすという。

 漫画作品のアニメ化、ドラマ化、映画化にもさらに力を入れ、「メード・イン・チャイナ」の漫画を世界に広めようとしている。(c)東方新報/AFPBB News