【7月26日 AFP】アフガニスタンの首都カブールで、シリンさんは数週間前から美容院にブライダル用の予約を入れていた。美容師らが念入りにシリンさんのヘアメークを進める店内では、リラックスした空気が漂うどころか、誰もがぴりぴりしていた。いつ警察が踏み込んできても花嫁を隠せるように、店の外には見張りを立てている。

 シリンさんは、この店の最後の客だ。イスラム主義組織タリバン(Taliban)暫定政権の命令で25日、全土の美容院が閉鎖された。

「たとえ刑務所に入れられることになってもやる。約束だから」とオーナーは話した。

 数人の美容師がシリンさんの周りで立ち働く中、他の従業員たちは店の片付けに追われていた。

 タリバンは2021年8月の政権掌握以降、高校・大学での女子教育や公園・遊園地・スポーツジムへの女性の立ち入りを禁止したほか、外出の際には常にヒジャブやブルカの着用を義務付けるなど、女性の公共の場での自由を制限している。国連(UN)やNGOへの勤務も禁じ、政府機関で働いていた多数の女性が解雇されるか、有給での自宅待機を続けている。

 美容院は多くの女性にとって家計を支える唯一の収入源となっていた。閉鎖命令は、女性から収入を得る手段と、社会的な交流の場を奪う新たな措置となった。

 カブールの美容院を利用していた女性(21)は、「美容院が閉鎖されると聞いて、がくぜんとした。私たちにとっては、身だしなみを整えるだけではなく、友達に会ったり、友達をつくったり、おしゃべりしたり、つらいことを紛らしたりする場所だったから」と語った。

「女性は娯楽施設に入ることを許されてない。じゃあ、私たちはどうすれば? どこなら楽しい時間を過ごせるのか。友人とどこに集まればいいのか」と嘆いた。

 マニジャさん(28)は、2018年から自身の美容院に時間と資金をつぎ込み、女性たち約200人を育成。美容師として独り立ちさせてきた。

 現在の従業員25人は全員、一家の大黒柱だが、振り出しに戻ることになる。マニジャさんのこれまでの努力も水の泡だ。

「私はこの国にとどまって税金も納めてきたのに、美容院が閉鎖されるなんて。本当に悔しい。国の経済にとっても、私たちにとっても大打撃だ」とAFPに話した。

 カメラさん(19)が1年前に美容院で働き始めたのは、メディア業界での職を失い、学業を続けられなくなったためだ。5人家族を一人で養ってきたが、美容院の給料がなければ、この先どうすればいいか分からないという。

 美容院を訪れた最後の客の長い黒髪を編みながら、「美容院の閉鎖は、私にとってすべての扉が閉ざされるのと同じ。アフガニスタンでは、女性として働くことも生きることもできなくなる」と話した。

「タリバンは明日には、女性は息をするなと言い出すかもしれない」 (c)AFP