【7月19日 AFP】オーストラリア北東部クイーンズランド(Queensland)州沖のガリ(K'gari)島(旧フレーザー島〈Fraser Island〉)で、イヌ科の野生動物ディンゴに観光客が襲われる事例が相次いでいる。しかし当局は、ディンゴの殺処分については否定している。

 国連教育科学文化機関(UNESCO、ユネスコ)の世界遺産(World Heritage)に登録されているガリ島では先月、10歳の少年がディンゴに水中に引きずり込まれたほか、今月17日にもジョギングをしていた20代女性がディンゴ数匹に襲われ、病院で治療を受けている。

 19日に現場を視察したリアン・リナード(Leanne Linard)州環境相はAFPに対し、オーストラリアにしか生息しないディンゴは島の生態系の一部として法律で保護されていると説明。殺処分を求める声は支持しないと語った。

 さらに、現在の約200匹という生息数は「維持可能」だとし、ディンゴの危険性や行動の特徴に関する来訪者への啓蒙が必要だと強調した。

 ニューサウスウェールズ大学(University of New South Wales)の生態学者マイク・レトニック(Mike Letnic)教授によると、ディンゴは通常人間に対して警戒心が強いが、ガリ島では人間を怖がるどころか「餌の供給源」として見ているという。

 また人と動物の関係を研究する心理学者のブラッドリー・スミス(Bradley Smith)氏は、ガリ島での襲撃のほとんどは「餌をやらない、近づいてきたら逃げる、常に集団で歩く」といったガイドラインを守らない場合に起きていると指摘。

 飼い犬のような外見と大きさのせいで「ディンゴに対して本来抱くべき恐怖心を抱かない」点が問題だと語った。(c)AFP/Sharon MARRIS