■「最も重要なのは子どもたちに希望を与えること」

 暴動を起こしているのは若年層とされる。ジェラルド・ダルマナン(Gerald Darmanin)内相によれば、6月29日夜に当局に拘束されたデモ参加者の平均年齢はわずか17歳だった。

 エリック・デュポンモレティ(Eric Dupond-Moretti)法相は「保護者に、子どもから目を離さないよう改めて呼び掛ける」必要があるとの考えを示した。

 モハメド・メクマシュさんは、低所得者層が集まるパリ東郊クリシースボワ(Clichy-sous-Bois)地区で2005年に暴動が起きた後に立ち上げられた組織でコーディネーターを務めている。この時は、アフリカ系の10代の若者2人が警察を振り切るために変圧施設に逃げ込み、感電死したことから暴動に発展した。

「私たちが前に進むには、保護者が無責任であるかのように責めても始まらない」とメクマシュさん。「今こそ若者たちに、彼らもこの国の一員であることを政府や社会が伝えるべきだ」と話した。

 政治学者で、労働者階級が多い地域出身の学生の保護者団体の共同創設者、ファティマ・ワサク(Fatima Ouassak)氏は「最も重要なのは、子どもたちに希望を与え、未来を信じさせること。(そうしなければ)また死者が出るかもしれない」と指摘した。

 AFPはパブロ・ピカソ団地で2日に取材を試みたが、若者たちは誰一人、口を開こうとしなかった。

 先月29日に行われたナエルさんの追悼デモ行進で出会った16歳の少年は、「標的にされるのはいつも同じ。黒人、アラブ人、労働者階級が住む地区の人々だ。彼らは、17歳の人間を理由もなく殺す。こんなふうに殺されることで、憎悪の気持ちを持ってしまう」と話した。

 ナエルさんの団地に住むモハメドさんとソフィアーヌさんは、「正義が果たされる」のを望んでいる。

「(ナエルさんを射殺した)警官も一人の人間だ。私たちと同じように裁きを受けなければならない。正義にダブルスタンダードはない」と話した。(c)AFP/Laetitia DREVET