【6月15日 AFP】スペイン最南端にほど近いカディス(Cadiz)湾。太陽が姿を現す中、漁師たちはクロマグロがかかった大きな定置網を引き揚げ始めた。「揚げろ!」の掛け声を合図に、ウエットスーツを着た男性たちが網の中に飛び込み、獲物にとどめを刺していく。

 3000年前から続く伝統的な定置網漁「アルマドラバ」だ。網を仕掛け、産卵のため大西洋から暖かい地中海に回遊してくるクロマグロを捕獲する。網は複数の区画で構成されており、特に大きな個体だけを捕らえられるように造られている。

「クロマグロはまるで雄牛だ。その一撃は馬の蹴りのように強い」と語るのは、船長のアントニオ・ポンセ(Antonio Ponce)氏(61)。

 この海域では紀元前約1200年ごろにフェニキア人が地中海を制して以来、アルマドラバが行われてきた。

 ところが、採算性の問題から、スペインでは1970年代にアルマドラバは途絶えかけていた。それが高品質のクロマグロへの日本からの需要の高まりを受け、息を吹き返した。

 カディス県沖では、年間約1600トンのクロマグロがアルマドラバによって水揚げされている。

 アルマドラバ生産者・漁師団体(OPP51)によると、カディスでは約500人の漁師がこの漁に従事している。

 スペイン以外では、イタリアとモロッコ、ポルトガルでしか行われていない漁法だ。