■持続可能な漁法

 世界自然保護基金(WWF)スペイン支部のホセ・ルイス・ガルシア・バラス(Jose Luis Garcia Varas)氏は、アルマドラバに使われる網は大きなクロマグロしか捕獲できないようになっているため、「持続可能な漁法」だと語る。

 クロマグロは2000年代初頭、すしが世界的な人気食となったことで危機に陥ったが、地域ごとに漁獲枠を設定したのが奏功し、個体数は回復した。

 国際自然保護連合(IUCN)は2021年、絶滅の危機の恐れのある野生生物を掲載した「レッドリスト(Red List)」を更新。タイセイヨウクロマグロの危機のランクを「絶滅危惧種」から「低懸念種」に引き下げた。

 日本人は地元の漁師に対して、クロマグロの味を良くするため、捕獲の際に与えるストレスを最小限に抑える方法を伝授した。現在は「ルパラ」と呼ばれる水中銃を使って即死させるようになった。

 魚網の構造は「長年にわたりほぼ同じ」だが、「苦痛を取り除いて品質を向上させるため、マグロの取り扱い方が変わった」と、ポンセ氏は指摘する。

 日本人は地元の人々に、以前は捨てられていた部位の食べ方や、魚を生で食べる習慣ももたらした。

 クロマグロには「25の部位、25の食感、25の味があるが、以前は知られていなかった」と、大西洋沿いの町バルバテ(Barbate)にあるレストランの料理長フリオ・バスケス(Julio Vazquez)氏(43)は語った。

 バスケス氏の店のメニューには、クロマグロを使った料理が32種類ある。「母や祖母の代には、これほど多様なメニューはなかった」