【6月2日 AFP】スイスの国民議会(下院)は1日、他国が保有するスイス製の武器をウクライナに移転することを特例的に認める法案を否決した。同日には、両国の大統領がモルドバで会談し、人道・復興支援について協議していた。

 議会の委員会が提出した法案は、反対98票、賛成75票で否決された。

 人口880万人で四方を他国に囲まれた内陸国スイスは、長年にわたり武装中立を維持。男性には兵役義務もある。だがウクライナ侵攻を受けて、中立方針の是非をめぐり激論が交わされてきた。

 スイスは欧州連合(EU)加盟国ではないものの、EUと同様の制裁をロシアに科している。一方で、ウクライナや友好国から圧力を受けても、自国製兵器のウクライナ移転を許可することは拒否し続け、軍事的中立を貫いてきた。

 これまで、ドイツ、スペイン、デンマークなどが移転許可を直接的に要請してきたが、スイス側は、紛争当事国への兵器移転を禁じる戦争物資法を理由に拒否してきた。

 スイスのアラン・ベルセ(Alain Berset)大統領とウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー(Volodymyr Zelensky)大統領は1日、モルドバで開催された欧州政治共同体(EPC)の会合に出席した。

 ベルセ氏はツイッター(Twitter)に「ゼレンスキー氏と、戦況やスイスの人道・復興支援に関する建設的な会談」を行ったと投稿した。国営放送RTSによると、会談は25分間に及んだ。

 ベルセ氏はRTSに対し、ゼレンスキー氏との会談では、ロシア側の凍結された資産や、スイスによる地雷除去支援、兵器の再輸出に関するスイスの方針などついて協議したと明かした。

 その上でベルセ氏は、「ウクライナ側はスイスの立ち位置と役割をよく理解してくれている」との考えを示すとともに、いつでもウクライナを訪問する用意があると述べた。(c)AFP