コロナ治験に抗マラリア薬を無許可処方 著名医師の処罰を 仏団体要求
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【5月29日 AFP】フランスの医療研究機関グループは28日、新型コロナウイルス感染症(Covid-19)治療として抗マラリア薬「ヒドロキシクロロキン」を使う「史上最大規模の『無許可の』治験」を行ったとして、著名研究者ディディエ・ラウルト(Didier Raoult)医師の処罰を当局に求めた。
ラウルト氏の処罰を要求しているのは16の研究機関。仏紙ルモンド(Le Monde、電子版)に寄稿し、地中海感染症大学病院研究所(IHU-Mediterranee Infection)の所長を務めていたラウルト氏と部下は「確かな薬理学的根拠と有効性の証拠もないままに、ヒドロキシクロロキン、亜鉛、イベルメクチン、アジスロマイシンなどさまざまな薬品を組織的に処方」したと指摘した。
しかも、「有効性がないことが完全に証明された後も、1年以上にわたり」処方されていたという。
著名な熱帯病専門家であるラウルト氏が、コロナ流行初期にヒドロキシクロロキンを使った新型コロナ治療を支持したことで、有効性が広く信じられるようになった。米国のドナルド・トランプ(Donald Trump)前大統領やブラジルのジャイル・ボルソナロ(Jair Bolosonaro)前大統領にも影響を与え、両氏は同薬の使用を推奨した。
フランスの医薬品・保健製品安全庁(ANSM)は2020年4月、ヒドロキシクロロキンを使った治療の結果、「深刻な状態に至り得る副作用にさらされる」と警告した。
マルセイユ(Marseille)検察は22年、詐欺のほか、地中海感染症大学病院研究所で無許可の治験を行った疑いで捜査を開始。ただこれまでに一人も訴追されていない。
ラウルト氏は新型コロナ患者3万人以上の治療に関する査読前論文を発表しており、保健省によると、この論文も捜査対象になる。
同氏は21年夏に教授職を退任、22年8月には研究所所長の職も解かれた。(c)AFP/Julie PACOREL