【5月23日 AFP】サッカースペイン1部リーグのレアル・マドリード(Real Madrid)に所属するビニシウス・ジュニオール(Vinicius Junior)が試合中に浴びせられた人種差別的なチャントについて、同国検察は22日、捜査を開始した。レアルは「こうした事態の阻止」を怠っているとして、スペインサッカー連盟(RFEF)を非難している。

 ブラジル代表で22歳のビニシウスは、レアルが0-1で敗れた21日のバレンシア(Valencia CF)戦の後半、敵地サポーターから人種差別的な暴言を浴びたとみられ、客席の前で観客の一人を指さした。この騒動で試合は数分間中断した。ビニシウスはまた、後半アディショナルタイムに小競り合いの中で相手選手をたたいて退場を宣告された。審判は試合後、ファンが同選手に対して「モンキー、モンキー」と合唱していたとのマッチリポートを提出していた。

 
 司法関係者はAFPの取材に対し、バレンシア(Valencia)当局が「ヘイトクライム(憎悪犯罪)」の可能性を視野に捜査を行っていると明らかにした。

 これに先立ち、レアルは「事実を調査し責任を立証する」べく検察当局に訴状を提出したと発表。また、クラブの見解として「ヘイトクライムがあった」と主張した。

 レアルとは別に、スペイン政府のスポーツ評議会も画像を分析して「侮辱や問題の行為におよんだ犯人を特定し、適切な制裁を提案する」と明言。同機関は過去にこうした問題を起こしたと認定されたファンに対し、1年間のスタジアム出入り禁止や4000ユーロ(約60万円)の罰金などの処分を提示している。

 一方、RFEFのルイス・ルビアレス(Luis Rubiales)会長は、スペインには人種差別の「問題」があるとし、「性別や皮膚の色を理由に侮辱的な言葉を浴びせるような、たった一人のファン、好ましくない個人あるいは集団がいる限り、われわれは深刻な問題に直面する」と述べた。

 しかし、レアルはルビアレス会長を激しく非難する内容のコメント文を発表し、人種差別的な暴言が聞かれた際には試合を中断すべきと提案している国際サッカー連盟(FIFA)のプロトコルを順守することについて、同会長がリーグ戦での適用を拒否しているため事態を悪化させていると主張した。(c)AFP/Gabriel RUBIO GIRON