フルーツの王様・ドリアンを最初に食べた中国人は誰か
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【5月22日 東方新報】中国のスーパーマーケットに色とりどりの果物があふれる季節になった。楽しみなのは新疆ウイグル自治区(Xinjiang Uighur Autonomous Region)の甘いハミウリ。切り分けると芳香が広がる高級メロンだ。あと、好き嫌いは分かれるが東南アジアからドリアンが入荷してくる。独特の臭いとトゲだらけの姿が目立つフルーツの王様。こちらは食べると忘れられなくなる危険な果物である。
出始めの4月は1キロ100元(約1963円)だったドリアンが、旬を迎えて1キロ20元(約392円)程度に値下がっている。100元もあれば、丸ごと1個買って帰ることができる。
今年は特にドリアンが安い。中国で売られているドリアンは主にタイ産だ。かつては船便で約7日、陸路で約5日かかったというが、ラオス経由雲南省(Yunnan)行きの鉄道路線が整備され、3日ほどで届くようになった。輸送時間が短縮されたことにより、傷んで廃棄される率が大幅に減ったことが価格下落の大きな要因になっている。
もっともドリアンに限っては、好きな人は高くても買うし、嫌いな人はいくら安くなっても買わないだろう。それほどまでにドリアンは好き嫌いがはっきりしている。
調べてみると、ドリアンを最初に食べて記録に残した中国人は15世紀の馬歓(Ma Huan)という人物だといわれている。明の永楽帝の命令によっておこなわれた大遠征「鄭和(Zheng He)の南海遠征」の随行者だ。
その馬歓が書き残した東南アジアおよびインド洋沿岸諸国の地誌「瀛涯勝覧(えいがいしょうらん)」には次のようにドリアンが紹介されている。
「ドリアンという8、9寸の果物は超一級に臭い。鋭いとげがあり、熟すと5~6枚にその実が裂ける。中には14~15枚の白い果肉があり、とても甘くて美味だ。その種はクリのような味で、炒めて食べることもできる」
すごく臭いのに甘くて美味。不思議な果物に遭遇した驚きがその記述ぶりから伝わってくる。きっと船団を率いる鄭和も食べたに違いない。
中国では明とその後の清の時代、民間人の海上交易は禁止されていた。いわゆる「海禁」である。普通の庶民はドリアンを食べることはできなかったのだ。
その海禁は王朝を防衛する必要から始まったとされるが、一方で、沿海地方の経済的発展を妨げてしまう。16世紀ごろまでは西洋にひけをとらなかった中国がその後落ちぶれていったのは、この海禁のせいだと考えられている。やはり貿易を禁じ、国を閉じるのは愚策なのだろう。
現代中国はどうだろうか。貿易を促進するための地域的な包括的経済連携(RCEP)協定が発効して1年半。この協定には、東南アジア10か国と中国、日本、韓国、オーストラリア、ニュージーランドの計15か国が加盟しているが、2022年の中国と加盟国との貿易額も前年比7.5%増になっている。他の加盟国も同じ傾向だ。自由貿易には副作用もあるが、その恩恵も大きい。どこか臭くて甘いドリアンのようである。(c)東方新報/AFPBB News